このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(163文字)
喪失と後悔の重みを、日常の細部を通して静かに紡ぐ物語です。第1話の溺れる描写が示すような強いイメージで読者を掴み、そのまま主人公の内面の波となって物語を押し進めます。ヒスイという猫と首元の翡翠のチャームは、単なる謎めいた装置ではなく、主人公の抱える未練と贖罪の象徴として巧みに働いています。日常描写(ブルーベリーやショートケーキ、家の佇まい)が感情の器となり、些細な所作が主人公の喪失感や癒しの過程を彩ります。桜庭さんの助言や、猫に向かっての「謝り」の場面があることで、語ること自体が癒しになっていく構成も丁寧です。
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