第7話
楓が私にカーディガンをくれたあの日から、もう二週間が経った。
私のクローゼットには、楓の匂いが染み付いた、大切なカーディガンが、静かにたたずんでいる。
その温かさが、私を包み込んでくれる。楓は、私の無口な愛情を、いつも理解してくれていた。その優しさに、私は、いつも胸がいっぱいになっていた。
楓は、あの日のことを何も言わなかった。ただ、いつもより、少しだけ、私に近づいてくれるようになった。
学校の休み時間、楓がクラスメイトと話しているとき、ふと目が合うと、すぐに顔を逸らしてしまう。その反応が、私には可愛くてたまらなかった。
放課後、私たちはいつも、二人で帰った。
「ねぇ、莉子。あのカーディガン、着てくれてる?」
楓が、ニヤニヤしながら、私をからかう。
「……うん」
私がそう答えると、楓は、満足そうに、微笑んだ。
私は、何も言えなかった。ただ、楓の手を、ぎゅっと握りしめた。その温もりに、私の心臓は、激しく高鳴った。
その日以来、私たちはさらに距離を縮めていった。放課後は、いつも二人で過ごした。カフェに行ったり、公園で話をしたり。
私は、相変わらず無口だったけど、楓は、私の話を、いつも、真剣な眼差しで聞いてくれた。その真剣な眼差しが、私には何よりも嬉しかった。
そして、季節は秋へと移り変わった。
「ねぇ、莉子。週末、どこか行かない?」
楓が、嬉しそうに、私に尋ねる。私は、少しだけ考えて、言った。
「……海、に行きたい」
楓は、目を丸くして、私を見つめた。
「え、海!?いいの!?」
「うん」
私は、小さく頷いた。
私たちは、週末、二人で海へと向かった。秋の海は、夏とは違い、静かで穏やかだった。波の音が、心地よく響いている。
「わぁ……」
楓が、海を見つめて、小さく呟いた。その瞳は、キラキラと輝いている。その姿が、あまりにも可愛くて、私は、フッと笑ってしまった。
「莉子、海、好きなの?」
楓が、私に尋ねる。私は何も言わなかった。ただ、楓の手を、ぎゅっと握りしめた。その温かさに、私の心は、満たされていく。
私たちは、二人で海辺を歩いた。波が打ち寄せるたびに、足元が濡れて、冷たい。しかし、楓と手をつないでいるだけで、私の心は、温かかった。
しばらく歩いていると、楓が、突然、立ち止まった。
「ねぇ、莉子。あのね……」
楓は、意を決して、私に話しかけてきた。楓の顔は、少しだけ、緊張しているようだった。
「私、莉子と出会えて、本当に、幸せだよ。莉子がいてくれたから、私は、こんなにも、幸せになれたんだ」
楓の言葉に、私の胸は、締め付けられる思いがした。私は、この言葉をずっと聞きたかった。楓の言葉を、聞くために、私は生きてきたのかもしれない。
私は、何も言えなかった。ただ、涙を、静かに流していた。
「ねぇ、莉子。泣かないでよ」
楓が、優しく、私の涙を拭ってくれる。
「違うの……」
私の声は、震えていた。
「楓に、出会えて、本当によかった……」
私は、そう言って、楓を、強く抱きしめた。楓は、私の腕の中で、静かに泣いていた。その温かさに、私は、この上ない幸せを感じた。
「莉子、大好きだよ。これからも、ずっと一緒にいてほしい」
楓の言葉に、私の心は、満たされた。私は、何も言えなかった。ただ、楓の背中に、手を回して、楓の温かさを感じていた。
その日、私たちは、恋人として、付き合うことになった。
それから、私たちの関係は、さらに深まっていった。放課後、私たちはいつも二人で過ごした。図書館で勉強したり、カフェでおしゃべりをしたり。私は、相変わらず無口だったけど、楓は、そんな私を、いつも、温かい眼差しで見てくれた。
そして、季節は、冬へと移り変わった。
クリスマスが近づいてきた。
「ねぇ、莉子。クリスマス、どこか行かない?」
楓が、私に尋ねる。私は少しだけ考えて、言った。
「……うちに、来てくれる?」
私の言葉に、楓は、満面の笑みを浮かべた。
「もちろん!」
クリスマス当日、私は、楓を、私の家へと招き入れた。楓は、いつものように、無邪気に、部屋の中を、走り回っていた。その姿が、あまりにも可愛くて、私は、フッと笑ってしまった。
私たちは、二人で、クリスマスツリーを飾り付けた。楓は、楽しそうに、オーナメントを飾っていく。その真剣な眼差しが、私には愛おしかった。
夜になり、私たちは、二人で、クリスマスディナーを食べた。私が作った、手作りの料理を、楓は、美味しそうに食べてくれた。
「莉子、ありがとう。最高のクリスマスだよ」
楓がそう言うと、私は、少しだけ顔を赤らめて、下を向いた。
食事が終わり、私たちは、リビングで、二人で、クリスマスツリーを眺めていた。
「ねぇ、楓……」
私が、小さな声で、楓の名前を呼んだ。
「うん」
「……これ、楓に」
私は、そう言って、小さな箱を楓に差し出した。楓は、その箱を受け取り、中を開けた。中には、可愛らしい、星の形のネックレスが入っていた。
「わぁ……可愛い!ありがとう、莉子!」
楓がそう言うと、私は、少しだけ、微笑んだ。
「莉子、私にも、莉子へのプレゼントがあるんだ」
楓は、そう言って、自分のポケットから、小さな箱を取り出した。中には、私のイニシャルと、楓のイニシャルが刻まれた、ペアリングが入っていた。
「……え」
私は、目を丸くして、楓を見つめた。
「これ、莉子と、お揃いにしたくて。莉子の指に、つけてもいい?」
楓が、そう尋ねる。私は、何も言えなかった。ただ、楓の手に、自分の左手を、そっと差し出した。
楓は、私の薬指に、そっと、リングをはめてくれた。リングは、私の指に、ぴったりと収まった。
「……綺麗」
私が、そう呟くと、楓は、満面の笑みを浮かべた。
「ねぇ、莉子。私、莉子のことが、大好きだよ。これからも、ずっと、一緒にいてほしい」
楓の言葉に、私は、何も言えなかった。
「……私も、楓が、大好き」
私の声は、震えていた。しかし、その言葉は、私の心の奥底から、湧き上がってきた、真実の言葉だった。
楓は、私の頭を、優しく撫でた。そして、このまま、ずっと楓と一緒にいられることを、心から願った。
私たちの恋は、これからも、ずっと、続いていく。私は、楓の隣で、これからもずっと、幸せに生きていける。
この物語は、ここで、終わる。
しかし、私たちの愛の物語は、これからも、ずっと、続いていく。
私は、心の奥で、そう確信していた。
拙作を読んでいただき、本当にありがとうございました。次回作は、ちょうど100話くらい溜め込んでいたもので、9月から投稿する予定です。ぜひご一読ください。
あなたの日常に、百の出逢いがあることを祈っております。来月にまた会いましょう。
それでは、
晴好雨奇
いつのまにか彼女に染められていた 晴好雨奇 @claudius64ro
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