第8話


  で、私は、「ブッディズムと進化論、アニミズム、時代遅れなキリスト教的な発想と西洋文明の超越」そういったテーマについて、漠然とそういう未来的に思えるテーマを無意識的にずっと暖めていて、考え続けていた。


 キリスト教と、一神教、そうしてそういう思想の根本には「砂漠と厳しい自然条件」が背景にあり、温床が「砂漠」という”死の世界”であるのは…仏教と対照的で、フロイトのエロスとタナトスという、有名な、しかし眉唾でもある(フロイト自身もそう認めていた)欲動の布置を連想させる。


 「死が身近だった時代」、人類の寿命もはるかに短かかった時代と、日常において死というものを常に度外視していても大丈夫な現代とでは、いろいろなことが変わっているはずで、”戦い”という、欲動。 愛というものと対極にあるそれについての、とらえ方。 愛というものがそれを北極星にしなくてはならないほどに遠い理想だった時代と、戦いではなく「涅槃」の境地が愛という人間的なダイナミズムの反対概念の思想、つまりブッディズムのほうがそれゆえに今日的になってきた、なるべき、そういうことではないかと、私の発想はじょじょに疑問が氷解して、収斂する感じになってきた。

 それが、56年前のことである。


 <続く>>

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コリンウィルソン 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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