第6話

(Cウィルソン風に)


 「進化を統べるダルマ」


 キリスト教と、進化論ダーウィニズムは対立する思想体系である。

 人間は造物主が作った、「神の似姿」であり自然淘汰やそれに伴う進化ということはキリスト教の教義と矛盾している。

 科学的な思考法の一般的になる以前のあらゆる知的遺産がそうである如くに、キリスト教の発想には実験や観察やノウハウの積み重ねという科学の方法論は介在していないので、これはむしろ当然の帰結である。


 では、仏教はどうだろうか?


 私は、1954年以来、不即不離に、この問題について考え続けていた。 <ブッディズムは汎神論に近い思想だ。 人間を特別なものとは考えていない。>

<ブッディズムの骨子は世界を貫く物質やそのほかのものが移ろいゆくうたかたの夢のようなもので、むなしい、と、断じるところで、人間はその色即是空の、色の一形態に過ぎない>


そういう法則が、つまりダルマ。

 仏法僧は仏教の三つの宝で、この世の摂理だから、ダルマは理論面の支柱。


 こういう風に、いつも堂々巡りの、妙にラビリンスのような思惟を続けていて…が、そのことは不思議と陶酔的なある種の妙味をも感じさせるのだった。 いや、愉悦と言ってもよかった。

 そうして私は、<これがヨガの三昧境なのかも>とか、その頃から流行し始めた、印を結んで瞑想をしながら、お香をたいたり曼荼羅を眺めたりしているニューエイジのヒッピーのごとくにご満悦であった。

 

<to be continued >

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