第36話:合理的なコンパ、略して合コン

「ヤクさん、可愛い彼女にプレゼントをあげる権利をあげます」

「……ポテチ食う?」

「食べません。そんな差別食品なんて」

「まだ遺伝子組み換え差別を根に持ってる……」


 俺の家にやってきたクイナはプンスカと怒りながら俺の隣に座る。


「急にプレゼントがほしいって、何か高いものでも欲しくなったのか?」

「高いもの……まぁものによっては高くなると思いますが、想定ではそんなに高くないですね」


 俺がクイナの分の麦茶を注いでいると、クイナは大真面目な顔をして言う。


「下着です」


 ちょっとお茶が溢れた。


「……それはまたなんで」

「今まで……というか、自警団に来てからはその初日にミズキさんに買ってもらったものを着用していたわけなんですけど」

「ああ、そうだったのか。それで着古してきたと」

「まだそんなに古くはなってないですけど、そろそろ買い足してもいいかもなって思いまして。……で、エンドユーザーの意見も取り入れたらいいかなって思ったのです」

「俺って女性用下着のエンドユーザーだったんだ」


 ちょっとニヤニヤしているのを見ると俺が困っているのを楽しんでいるようだ。……コイツ、めちゃくちゃエロい紐みたいなのを贈って困らせてやろうか……!


 クイナは俺の身体を甘えるように触る。


「ヤクさんにかわいいと思われたいので、選んでください」

「本音は?」

「ミズキさんからもらったお小遣いを浮かせて豪遊しようかと」

「お前なぁ……」

「いいじゃないですか! この前、合コンの幹事頑張ったんですよ! 中学生女子に全部任せた人達がいるそうですね!?」

「それを言われると辛いんだけど、それはそうと大事故だったからな?」


 まぁ……確かに乗り気じゃなかったとは言えどクイナに雑に任せるのはよくなかったかもな……。

 なんやかんや頑張ってたのは確かだし……。


「……まぁプレゼントはいいんだけど、下着はやめないか? 真中ミズキにめちゃくちゃキレられそう」

「めちゃくちゃキレられそうなのを選ぶつもりなんですか?」

「いや……過激なのを選んだらもちろん怒られるし、子供っぽいのを選んだらそれはそれで変態っぽくて怒られるだろ」

「でも……ヤクさん、自分が選んだの着けてたら興奮しませんか?」

「それは……するけども……!」


 夢が広がるけど……!

 それはそれとして……こう、普通に良識として不味いなというのがある。


 買いにいくならこの街じゃなくて遠くのデパートだからそれなりに人がいるだろうし、そんな中でクイナの下着を選ぶのは流石に厳しいものがある。


「……あのな、クイナ。俺たちはまだまだ長いんだ。そんなに急いでアレコレしなくてもいいだろ」

「じゃあ服でいいですよ。ヤクさんが好きなのを選んでください」

「まぁそれなら……。クイナ、なんか交渉上手くなってない? 元々服を買わせるつもりだったろ」

「そんなことないですよー。普通に色々大変だったからご褒美が欲しかっただけです。次またお願いされたらすごく高くなりますからね」

「もう頼むことはないよ。もし頼んだらなんでもするよ」

「えっ、じゃあ……ダブルベッドを買って、毎日べったべたにくっついて寝るとかもいいですか?」

「まぁ万が一もないからいいけどな。合コンを頼むことなんて」


 俺がそう言いながらクイナの頭を撫でていると、愛知から連絡が来る、クイナから手を離したくなかったので、スピーカーモードにして机の上においた。


『厄神! 今大丈夫か?』

「ん、ああ、家だから平気だけど……どうかしたのか?」

『どうかしたというかなんというか……総理大臣からお願いされたというか』


 ……総理大臣?

 総理大臣? ……総理?


「あー、なんかの詐欺か?」

『いや詐欺じゃなくて、機関経由で……この前、深見と会ったろ。それで政府もなんとしてでも内密に深見と会いたいということらしくて……』

「……マジのやつ?」


 電話越しの愛知は焦りっぱなしで肯定する。


『大マジのやつだよ! 厄神は連絡先交換してないか!?』

「……俺はしてないけど、山田アリスがしてたな」

『なんとかして呼び出せないか? 流石に総理大臣に直接頼まれるとなんか断れないだろ』


 焦る愛知の言葉を聞きながら……隣にいるクイナがニコリと笑う。


「……」

『どうした?』

「ちょっと待ってくれ。少しこっちも交渉する」

『何の交渉?』


 俺は通話をミュートにしてからクイナを見る。

 クイナは話を聞いていたのかニコリと笑う。


「深見クノウ、この前は合コンに来ましたね。呼び出すなら同じ名目の方が可能性ありますよね」

「……クイナ、よくないと思うんだ。若い頃から毎日毎日ベタベタするのは」

「今、気持ち良ければいいんですよ?」

「……流石にさ、身体が保たないだろ。お互いさ、連日は」

「ヤクさん、ひっついても我慢したらいいんですよ?」

「……」

「……」

「……それはそれで辛いだろ」


 クイナはジッと俺を見る。

 クイナは確信している……。ここは黙ってたら絶対に俺が折れるな、と。


「いや、総理だぞ? 総理大臣が来るんだぞ、深見クノウと話をするために」

「合コンを開きます」

「そりゃあ、一回はきたよ、合コンにもな。そりゃ再現性を求めるなら同じやつから試すのがいいのは分かるよ。けど、合コンに総理を呼ぶのか?」

「合コンを開きます」

「……男側が、おそらく俺と深見と総理だぞ? 女の子はクイナと山田アリスともう一人だぞ」

「キリちゃんを呼んで、合コンを開きます」


 ……冷や汗が流れる。

 何故だ。何故……ロリ合コンに総理大臣を呼ぶことが最適解になっている……!


 これが、これが現実なのか!?


 クイナは俺のスマホに目を向ける。

 決断を愛知に伝えろということか……。


 ……俺は精神を落ち着かせながらミュートを解除する。


「愛知」

『ん、ああ、どうした?』

「深見を呼び出すんだな」

『ああ』

「……開くぞ、合コンを」

『!?!?』


 電話の向こうで愛知が困惑しているのが分かる。


「……この前はそれで来たんだ。可能性が高い手からやるべきだろう」

『それは……そうだが、総理大臣が来るんだぞ!? 直接……!』

「ああ、だが……やるしかないだろう」

『本当か? 本当にそうか? 別にそんなことなくない?』

「男側は俺、深見、総理大臣の三人だ」

『世界最強、ラスボス、総理大臣……流石に、イカつすぎるだろ……!』

「女の子はクイナ、山田アリス、柳キリだ」

『平均年齢低すぎるだろ……!』


 それでも、それでもやるしかないんだよ……!

 なんか総理に頼まれたら断りづらいじゃん……!


 俺と愛知が電話している横で、クイナは自身の要求を通せることにウキウキしながら山田アリスに電話をする。

 どうやら山田には了承をもらった様子でご機嫌そうだ。


 そのあと、俺と愛知が電話を続ける中、折り返しの電話がかかってきて、クイナはグッと俺にサムズアップをする。


「……深見の参加は確定した」

『なんであの男はフットワークそんな軽いんだよ……!』


 愛知の叫びが響く。


「柳がアジトに来たら伝えておいてくれ」

『なんて言えばいいんだ……?』

「総理大臣の頼みで合コンを開くから参加してほしいと」

『総理大臣の頼みで合コンを開く訳では……なくないか!?』

「俺は俺で、合コンで盛り上げる方法を調べておく。頼んだぞ、愛知」

『合コンは別に盛り上がらなくてもいいだろ!』


 そうして……師走川クイナが幹事を務める二度目の合コンが開催されることになったのだった。

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