第27話:ラスボスの登場的な回

 アレから数日、昼間はいつものように掃除をしながら商店街の落書きを見にいき、夕方から夜はクイナに勉強を教えたりする生活。


 時々愛知達の特訓を見てやってという毎日を繰り返している。

 そんな中で、宇宙の絵を描いている子供が今日は珍しく上手く絵が描けないようで腕を組んでいた。


「どうしたんだ?」

「あ、こんにちは」


 何度か会ったからか慣れて挨拶ぐらいはしてくれるようになった子供がスプレー缶を握りながらため息を吐く。


「その……学校の友達。ちょっと歳上なんだけど、その人に誘われてお食事会みたいなのがあって」

「へー、楽しめばいいんじゃないか?」

「その……知らない人も来るらしくて」

「ああ、まぁ人に慣れるのに良い機会じゃないか?」

「そうなんだけど、えっと……合コン、らしくて」

「あー、そういうのあるのか。今の子は」

「……止めないの?」

「いや……止めはしないけど」


 ……ええ、小学生が合コンかぁ。

 今の子は進んでるな……ま、まぁ……大人のものと違って微笑ましいものだろう。


 一瞬、クイナのことを思い出すが、この子は男の子だろうからクイナが集めたメンバーと違うだろう。


 そう思っているとクイナから自警団のグループ宛てにメッセージがやってくる。


『今日の放課後に合コンをするので、このお店の前で集まってください』


 と店のホームページのURLが送られてきた。

 ……違うよな?


 と思いながら、心を落ち着かせるようにゴミ拾いをしながら帰路に着いた。

 しばらくすると平林から『作戦会議をするぞ』と呼び出されてアジトに向かう。


「遅い。やる気はあるのか、厄神」

「当然ないけども……。というか……」


 クイナの知り合いだから多分小さい女の子だぞ……と思っていると、愛知は同情の目を平林に向けながら首を横に振る。

 そうだよな、短い時間ぐらい夢を見せてやるか……。


「まずどの子を狙うかの合図から決めておこう。被ったら困るからな」

「もし俺と被った場合は普通に殴るけどな?」

「俺もミズキが怒るだろうから、普通に飯食うだけだよ」

「やる気あるのか!?」

「ないって……」


 と、俺たちが日常と呼べるのか分からないが、戦いとは遠い平和な日を味わっているそのときだった。


 唐突に発生する圧倒的なプレッシャー。ピリピリとした刺激が俺たちの肌に突き刺さり、誰かが指示するでもなく全員そのまま外に飛び出す。


 そして、アジトの前に立っていた男と相対する。


「……久しぶりだな。ヘドロ、そして愛知リュウ」

「ッ……深見! 深見クノウ!」


 愛知は前に出ながら構え、深見はそんな愛知を見て鼻で笑う。


「ははっ、違うさ。戦いに来たんじゃない。ただの新年の挨拶だ」


 機嫌の良さを隠そうともせずに深見は笑う。


「…-新年だと?」

「そうだ。この世界は変わった。どう生きるか、どう死ぬか。お前達は何を選ぶのか……それを見にきただけだ」

「……このまま逃すと思うのか? 深見クノウ!」


 叫ぶ愛知に平林が止める。


「待てリュウ。……ここで戦えば……この街はめちゃくちゃになるぞ。それに、逃げる手段は確保しているだろう。いたずらにこの街を壊すだけだ」

「っ……」


 平林の冷静な言葉に愛知が歯噛みする。


「ふっ、仲間に恵まれたようだな」

「……当然だ」


 見下すが明らかに「敵」として愛知を見ている深見クノウ。その間に平林が入る。


「それに……今日は合コンだから……! 揉め事になったら困るだろ!」

「お前以外は誰一人として困らないよ」


 深見クノウは一瞬固まる。


「……ふざけているのか?」

「ふざけてなんかない。俺は本気だ。……というか、深見クノウ。参加するか?」

「!?」

「!?」

「しない」


 当然のように深見クノウは断る。だが、平林は食い下がる。


「……逃げるのか?」

「!?」

「!?」

「なんだと……?」


 平林は一歩前に出て、深見クノウに言う。


「合コンという場に出て、自身が俺たちよりもモテないということを突きつけられることが怖くて逃げるんだろう?」

「ふっ……はは、何を言い出すかと思えば。……いいだろう、お前達に格の違いというものを教えてやる!」

「……正気か?」

「正気ではないだろ」


 深見クノウは闇の瘴気的なものを出しながらアジトの中に入る。


「敷金とか平気かな」

「それを気にする場合でもないだろ」


 アジトに入った平林は深見に言う。


「まず、どの子を狙うかの合図を決めようと思う。喧嘩になってはいけないからな。そこで、並んでる女の子を左から番号をつけていって、一番の子を狙うなら咳払いを一回、二番の子なら二回連続でするみたいな方法でいこう」

「なるほど。……これが自警団の参謀か」

「クビにしたい」

「どんな顔をしてクイナ達と合流したらいいんだよ、俺たちは」


 何故かロリ合コンに参加することになったラスボスと打ち合わせをして、一応クイナに男性陣が一人増えることを伝えて、そして四人で会場の店まで向かう。


 先に来ていたらしいクイナが俺たちを見つけて手を振る。

 まだ遠くてシルエットぐらいしか見えないが……明らかに……明らかに、小さい。


 クイナを含めた四人中クイナよりも小さい子が二人もいる。


「おーい、こっちですよー。まったく、急に増やされても困ります。お店も予約してるのに……女の子もたまたま見つけられたからよかったですけどー……。……深見クノウ!?」


 クイナはラスボスを見て構える。


「……失敗作のひとりか」

「な、なに……! というか、なんで深見クノウがこんなところに……!」

「いや、なんか合コンに参加することになって……」

「……なんでです?」


 俺に聞かないでほしい。


 現実逃避のようにクイナが集めた女の子を見る。

 クイナとこの前見たクイナの友達の同級生……それに、いつものパーカーではなく、可愛らしいワンピースを着た宇宙の落書きの子供。


 お前。女の子だったのか!? と驚くよりも前に、最後の人物が目に入る。


「あわわ」

「……なんか、五天一刃のひとりがいない?」


 着物に刀を抱えた幼い少女。

 五天一刃のひとりである柳キリがいつものようにあわわってた。


「さっきそこら辺に歩いてたから拾いました」

「拾うな、五天一刃を」

「あわわ」


 女性陣の……平均年齢……ギリ……二桁か……?

 俺がもはや何に戦慄すればいいのか分からずにいると、ラスボスみてーな男が俺たちを見て信じられないものを見る目を向けていた。


 ごめん……。巻き込んでごめん。ラスボス。


 こうして……世界を混沌に陥れた革命家、それと敵対する主人公みたいなやつ、アホ、世界最強の男の四人が……相手がロリばかりの合コンという社会的に終わり過ぎている地獄のイベントに挑むこととなったのだった。


「おほんおほん」


 深見クノウ……合図するんだ……!

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