第26話:自警団の仲間達
アジトは言ってしまえばただの民家なのだが、元々五人家庭ぐらいを想定した作りなのか結構広い。
適当に近くのコンビニで買ってきた弁当やらカップ麺を食べたあと、なんやかんやと解散せずにアジトの中で各々過ごす。
俺はソファの上に寝転び、クイナは俺の腹の上に座りながら何かの動画を見てけらけら笑っている。
真中ミズキはチラチラと愛知の方を見ながら掃除をして、愛知はぐったりとしながら今後の予定を考えていた。
拝島と平林は酒を飲んでいたので20歳は超えているようだ。
案外そんなに俺とも歳が変わらないんだな。
未成年は真中ミズキとクイナぐらいなのか。
まぁ数年戦ってきてるみたいだし歳も取るか……。
そう思いながら酒を飲んでいるふたりを見る。
愛知と真中、俺とクイナと、六人のうち二組カップルが出来ているのだからこのふたりもそうなのだろうかと思ったが、そんな雰囲気はない。
拝島ツユは茶髪に染めていて少しギャルっぽい格好だ。
成人しているからか少しだけ落ち着いているがスカートは短く体の線が見えるような服を着ている。
平林ヨシトは生真面目そうな雰囲気だが、戦友と一緒にいるからかそれとも酒が入っているからか少し冗談も交えて話をしている。
……微妙に気まずいな。
ここにいるのは、かと言って俺が帰ると言えばクイナもついてきたがるだろう。
そうすれば真中は嫌がるだろうから……自分から帰るとも言い難い。
そう考えているとポケットに入れていたスマホが震える。
腹の上に乗っているクイナが落ちないように支えながら取り出してみると、俺の上に乗っているクイナからのメッセージだった。
『時間分けて出た後で合流します?』
悪戯っぽくクイナは笑い、手で俺の胸を撫でる。
了承しようかと思っていたところで、拝島が「そろそろ帰ろっかな」と言い出して、愛知にまだ酒が残ったチューハイを押し付けていた。
「なんだよ……」
「へへへ、せーじん祝いだよー。んじゃ、今度は一緒に飲もうねー。ほなさいならー」
と拝島は帰っていき、それを見た愛知は少し不満げに「知ってたのかよ」と言いながらも残り物を気にした様子もなく酒に口をつける。
それからツマミの豆をひとつ齧って俺の方を向く。
「せっかくだし厄神も飲もうぜ」
クイナの方を見ると「仕方ないですね」とばかりに俺の上から退いたので、俺は新しい缶を手に取ってカシュっとそれを開ける。
「お酒って美味しいです?」
「んー、まぁそれなりに。それよりも酔うと未来のこととか考えられなくなるのがな、とてもいい」
「これ、もしかして良くないお酒の飲み方してる人ですね?」
「過去の後悔とか黒歴史とか忘れられるんだ」
「もしかしなくてもダメなお酒の飲み方してる人ですね?」
「あれ、君は誰……」
「彼女の存在を黒歴史呼ばわりしてます!?」
クイナは「まったく……」と言いながら俺が寝転んでいたソファに寝転んで俺の上着を毛布代わりにして包まる。
俺が愛知達の近くに座ると、平林が少し驚いたように俺を見ていた。
「……厄神って冗談とか言うのな。あ、結局ほとんど話したことないよな。平林ヨシトだ。えーっと、何を話したものかな」
「いや、だいたい見てきたから知ってる」
「そういや結構ピンチのときに助けてくれてたもんな。命の恩人だ」
愛知達自警団は何度か全滅しそうになり……クイナとの関係もあるのでその度に軽く逃す程度の助力はしていた。
「……いや、別に大したことはしてない」
「そうそう。あの頃のヤクさんは私に片想いをしてたからいいところを見せたかっただけですよ」
「いや、あの頃って話したこともなかっただろ」
俺が酒を飲みながら言葉を返すとクイナは悪戯な表情で言う。
「一目惚れってやつをしてたんですねー」
「そんなわけが……。……」
いや……どうだろうか。
……いや、うん、俺は別にロリコンではないので多分そういうわけではないが、世界の監視をする中で愛知がクイナを仲間にした辺りから増えていたような。
「……えっ、厄神……?」
「俺の話はもういいだろう。厄神家なんて九割方なんかよく分からないけど地元の人に偉そうにしている厄介者でしかないし、俺もただ傍観していただけの存在だ……」
「今の話聞いてた感じだと傍観じゃなくてストーカー……」
「俺はただの傍観者……」
「厄神……」
平林は俺とクイナを交互に見て酒を飲む。
「っ……純愛。そうだ、純愛ってやつだな?」
「ヨシトがやっくんのあまりのアレさに自己洗脳を始めた……!」
「やっくんと呼ぶな」
平林は少し笑ってから酒の缶を片手にため息を吐く。
「はあー、なんか自警団もカップル増えてきたな……。俺の青春、戦いと修行ばっかりだよ。羨ましい……俺も彼女欲しい……」
「ああ……いい子いないのか?」
俺が声をかけると彼は首を横に振る。
「大学中退してずっと戦ってんだよ。知ってる女、だいたい敵」
「……それは、辛いな。それにしても真面目そうに見えたのに彼女とか欲しがるんだな」
「そりゃそうだろ……! 真面目な奴も、ガリ勉も、オタクも……みんな内心ではおっぱいのことばっかり考えてるんだよ……! お前らの学生時代の眼鏡たちもそうだからな!?
おっぱい勉強おっぱいおっぱいふとももおっぱいぐらいの割合でしか勉強のことなんて考えてないから……!」
「そんなことはないだろ」
平林の熱弁に、ソファに座って話を聞いていた真中とクイナがドン引きの表情を向ける。
「俺は命懸けで戦ってるのに……SNS見たらみんな彼女がどうとか合コンだとかサークルだとかさ……!」
「サークルは別にいいだろ……」
「大学生のサークル活動なんてほとんど盛り場と言っても過言ではないだろ!?」
「過言だろ」
「それでも仲間がいるからと思ってたら……なんか自警団の中からカップルが二組出来てるし! ミステリ作家顔負けの叙述トリックじゃないか!?」
「叙述トリックではないな」
「いや、俺とミズキはまだ付き合ってないし……」
「ほら『まだ』って言った! 『まだ』って!」
……めんどくさい。悪酔いしてるな……。
「俺はさ、別に高望みなんてしてないんだよ。ただ、ただ……彼女を作っておっぱいを揉みたいだけなんだよ……!」
真中とクイナは平林にドン引きの目を向ける。
「……ま、まぁ、落ち着けよ、な?」
愛知がそう言うも平林は吠える。
「お前に、お前に分かるか……おっぱいを揉めない俺の気持ちが……! …………いや、よく考えたらお前らもおっぱい揉めないよな。なんかごめんな」
真中は近くにあった座布団を平林にぶん投げた。
……揉めないほどではない、と思っても言わずにいると、平林や座布団に倒されながら啜り泣く。
「うう……彼女欲しいよお、出会いないよぉ」
「いや……そう言われてもなぁ」
「合コン開いてよお」
「いや、そんな女の子の友達いないしなぁ。やっくんは?」
「やっくん言うな。俺もほとんど知り合いなんかいないぞ」
俺が真中の方に目を向けると彼女も難しい表情をする。
「うーん、異性との出会いのための場を意図的に作るなんて不誠実じゃないですか?」
「不誠実じゃない……! 学校とかバイト先とかで下心出したら出したで人間関係がある中で崩れるようなことするなみたいに言われるだろ……!? ならそうするしかないだろ!!」
「ま、まあ……そうです、ね?」
真中は勢いに負けるもそんなに女友達がいないのか困った表情をする。
「そもそもセッティング出来ても愛知とか俺は参加するのも……」
「いや、だからこそいいんだ、隣に彼女のいないイケメンとかがいたらみんなそっちに行くだろ? だから彼女持ちを配置することでそのリスクを回避出来る」
「……まぁ、私は協力しませんよ」
真中は呆れたように首を横に振り……最後にクイナの方に視線が集まる。
「んー、まぁ別にいいですよ。用意しても、その代わりヤクさんを連れていくなら監視のために私もいきますから」
「本当か! ありがとう……ありがとう……。いつもクソガキって思っててごめんな」
「協力する気が失せましたね」
「ごめんって」
クイナにペコペコする平林を見ながら愛知と共に酒をちびちび飲む。
「……いや、クイナの知り合いだと子供じゃね?」
「……励ます準備しとくか」
そして後日……クイナが女性陣のメンバーを集めた、どう考えても始まる前から終わりが見えている合コンが開催された。
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