第3話 再訪、そして土曜日
―土曜日―
歳を重ねるとともに、日々過ぎるのが早くなっていたが、この日までは、どれほど待ち遠しかったことか…。
気づけは昼過ぎ、店の前に立っている。
――カラン
「いらっしゃい!」
3回目で確信した。ベルの音から「いらっしゃい」のタイミングが一定だ。
次はいらっしゃいを一緒に言える気がした。
「きたきた!」
店主は笑いながら、そして茶化すようにカウンターに座るよう目くばせした。
「アジフライ定食で」
この前のこともあり、若干無愛想気味に注文した。
「その様子じゃ、まだ思い出してないんだね」
ケラケラと笑いながら、つぎつぎと料理をこなしていく。休日の昼ということもあってなのか、席はほぼ埋まっていた。
さすがに、話しかけられる雰囲気ではないので、じっと定食が出てくるのを待つことにする。
それにしても、ワンオペでオーダーをこなす手際はいつ見ても凄い。いや、気持ちがいいというべきか。
そのうち、多分自分のものであろうアジフライもジューッという音とともに油に投入されているのが見えた。
「お待ちどうさま」
といって、カリカリに上がったアジフライ定食がでてきた。
「外暑かったでしょ。この時期だもんね」
「えぇ、日差しが強いですしね」
その時、一瞬空気が変わった気がした――
店主は、いつものいたずらっぽい顔から、少し真顔で優しい顔になってこういった。
「七夕の季節だね―」
店にいる何人かの箸が一瞬止まった。
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