Daydreamoon

浅野エミイ

プロローグ

 夏。はっ、はっ、は。息を切らせて階段を上る。汗が滝のように出る。……困ったな。これから人と会うのに。うっかり電車を乗り過ごしてしまった。

 貴方に会うことが楽しみで。貴方に会うことが今までの夢で。貴方にこれを渡すのが目標で。

 そんなことを考えていたら、神保町なんてすぐに過ぎてしまって、僕は逆方向行きの電車が過ぎたホームから、反対側のホームへと移動する。

 よかった。こんなこともあろうかと、三十分早く着くようにしていて。

 僕は汗ばんだ手に持った原稿用紙入りの封筒をぎゅっと胸に抱く。これを読んだら、貴方はなんて言ってくれるだろうか。

 ――この想いは、片想いなんかじゃないと、僕は確信している。

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