学園スチームエクスプレス

クフマイク

第一章・出発進行!!

第1話プロローグ

春先香る風が頬を流れるように通り過ぎる。

私・哲務てつつとむは、新たな学ランに身をつつみ、この町で一番巨大な学校に向かった。

『また、花粉の時期ですね…』

私はそんな事を思いながら、通学路を歩いていた。

――学校に着くと、淡いピンクの桜の天井が、校門前の通路におおいかぶさっていた。

甘い桜の香りが、鼻をかすめる。

『これは、すごいですね…落ちてくる桜の花びらが、ベールのようになって…』

そんなキザっぽいことを思いながら、昇降口しょうこうぐちまで歩く。

途中、体育館があった。体育館の扉から見える紅白のカーテンが、太陽の光に当たって鮮やかな色をしていた。

今日は私の入学式なのである。

 高校は中学と違い上履きがない。だから、ローファーという革の靴をはき、それを上履きがわりにしているのだ。

『慣れてない靴ですから痛いですね…、たぶん靴擦れをしてしまいました…』

少し、気分が落ち込みながらも教室に向かった。

教室は1-C組。比較的ひかくてき、昇降口から近いため、私の心は少し元気を取り戻した。

私は、ガラガラと音を立てる扉を開ける。

まだ人は来ていない。『楽しみすぎて少し早く来てしまったのか…』、と思った。

私は、黒板に貼られてある座席表を見て、一番右の、先頭から二番目の席に座った。

その直ぐ後に、先頭の扉から、女の子が来た。

漆黒のつやのある髪を、ポニーテールで結び、制服をきちんと着ている女の子。

すると、その子は座席表を見て、私の隣に座った。

私は、何を話せばいいか分からなかった。

なぜなら、学校初日で女子と、隣になるなど初めてだったからだ。

すると、彼女が先に話しかけてくれた。

「私の名前は、篠原真希しのはらまき。よろしくね!!」

『とても元気な子ですねぇ…』

その篠原さんは、元気だが人には迷惑をかけない優しい人、という雰囲気をかもし出していた。

「ご丁寧にありがとうございます。私の名前は、哲務です。よろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

彼女は、私の敬語に少しドギマギしながらも、笑顔をくずさず答えた。

――それから二十分もしないうちに、教室には人があふれかえった。

私は、机に座り本を読んでいた。

別に、ガヤガヤとした教室は嫌いではない。

ただ、自分からにぎわっている所には行きたくないだけなのである。

すると、前の席の二人組が私の方を向いた。

「ねぇねぇ!!友達とか作らないの?」

元気で活発でハキハキして透き通った声に、センター分けをしているのが特徴の男の子。

続いて隣の子が、男の子を咎めた。

「こら!!だめでしょ!!読書の邪魔したら!!すみません、ご迷惑かけて」

けんそん気味で少しドライなしゃべり方、頭を下げるショートヘアーが特徴の女の子。

それを見た私は驚いた。

「か、顔が同じ…双子ですか?」

思考より勢いが勝ち、聞いてしまった。

すると二人は、クスクス笑いながらこう言った。

「「そうだよ(です)!!」」

『声までそろうのか…』と私は、感心してしまった。

すると、教室のざわめきを遮るように、放送が入る。

ピーンポーンパーンポーン。

『これから入学式を行います。新1年生の皆さんは、体育館に移動してください。繰り返します…』

私は、本を机にしまい立ち上がる。ロッカーから体育館履きを出した。

双子も私の後について、体育館履きを取りに行った。

「あ!!僕の名前は、森塚夕もりつかゆう、よろしく!!」

「いきなりねぇ…。私の名前は、森塚明衣もりつかめいよろしく」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

私はこの時、懐かしい感じがした。

――そして、ついに私の入学式が始まる。

私は、体育館に向かっている間も、『新しいことが待っているかもしれない』と心弾ませた。

しかし、その気持ちはとある形で実現することとなった。

そう、たくさんの試練と立ち向かうとも知らずに…。

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