EP 26

爆炎の救出劇

ヴォルフに案内され、優斗とモウラはエターナルの地下に広がる『百狼』のアジトへと足を踏み入れた。そこは古い水道跡を利用した広大な空間で、多くのメンバーたちが思い思いに過ごしている。

「ま、ここで待ってな。じきに俺の手下どもが、そのエリーナって奴を連れてくるぜ」

ヴォルフはアジトの奥にある一番豪華な椅子にどっかりと腰を下ろした。

「本当に? こんな怪しげなアジトに、エリーナが無事に来てくれるのかしら……」

モウラが不安そうに呟く。その彼女を見て、ヴォルフはニヤリと笑った。

「それにしても、モウラと言ったな。この俺を負かすとは、大したもんだ。俺は強い女は好きだぜ?」

「あら、そう。残念だけど、私は悪党は嫌いだわ」

モウラの氷のような返答に、ヴォルフは「うっ……」と怯む。

「お、俺たちは、一応“義賊”を掲げてるんだがな……」

「私から財布を盗んだ奴が、よく言うわ」

「あれは! 中身を少しだけ抜いたら、返すつもりだったんだ!」

「嘘ばっかり。私、嘘をつく人も大嫌いよ」

「モウラ、容赦ないな……」

優斗が思わず苦笑した、その時だった。

ドガガガアアアン!!

アジトの入り口の方角から、凄まじい爆音と衝撃が響き渡った。天井から土埃が降り注ぎ、アジト全体が激しく揺れる。

「な、何だ!? 敵襲か!?」

ヴォルフが立ち上がった瞬間、一人の手下が、顔を真っ黒に煤けさせながら転がり込んできた。

「ひ、ひぃぃ! あ、兄貴! 化け物ですぜ! あのエルフの女!」

「何だと?」

「『仲間を基地で預かっている』って親切に教えてやったら、いきなり……!」

手下の悲鳴が終わらないうちに、爆炎と共にアジトの壁が吹き飛んだ。煙の中から現れたのは、その手に持つ世界樹の杖の先端を赤熱させ、瞳に怒りの炎を宿したエリーナだった。

「ここねぇ? 私の仲間を閉じ込めているっていう、悪党の巣はぁ!」

彼女の足元では、小さなゴーレムたちが火の玉をぽんぽんと投げている。

「ひぃぃ! だから! 俺たちはただ、貴方をここまで連れてきてくれって、兄貴に頼まれただけで……!」

手下の弁明など、今のエリーナの耳には届かない。彼女が、特大の爆炎魔法を放とうと杖を振りかぶった、その瞬間だった。

「エリーナ! 落ち着いて!」

モウラの声が、アジトに響く。

「え……? モウラ! それに、優斗も!」

エリーナは、アジトの奥にいる二人を見つけると、杖から力を抜き、ぱあっと顔を輝かせた。

「無事だったのね! 心配したんだから!」

仲間との再会を喜ぶエリーナ。

彼女が吹き飛ばした壁と、腰を抜かして気絶している手下たち。

そして、自分たちのアジトの惨状を前に、呆然と立ち尽くすヴォルフ。

エターナルの地下に、なんとも言えない気まずい空気が流れていた。

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