飽きた魔神が眷属を連れて転生、勇者の手助けをするそうです
@sinoudai
Elephas Vana 空虚な象
デリリウム・トレメンスは憂鬱だった。目覚めと同時に、旧友が遠方より訪ねてくると知り、それからずっと塞ぎ込んでいる。友と言えども、腐れ縁だ。数百年にも及ぶ付き合いだが、ろくな思い出がない。面会など御免被りたい。
「マクスウェル。少し家を空ける。俺を訪ねるヤツがいたら、死んだと伝えるように。いいね」
メイドのマクスウェルに厳命した。マクスウェルは几帳面な性格をしており、主人の言いつけは徹底して遵守する。信頼するメイドに時間稼ぎを指示し、いかに未来を遠ざけるか。
デリリウムは、マクスウェルの返事を待たずに外套を羽織り、足早に書斎の扉に向かった。
しかし、もう一人のメイド──ラプラスがその扉の前に立ちはだかった。そして、死刑宣告のように言った。
「お客様ッスよ」
「だから言っただろ。俺は死んだと──」
「ゆーて、ムリっしょ。モルトマン様ッスよ。すぐにバレて見つかるって」
「やっぱアイツか。なら、時間を稼げ。マクスウェルと二人で、最大火力での先制攻撃を許可する」
「成功率はゼロッス。仮にモルトマン様を撃滅できても、あっちゅー間に再受肉して降臨ッスね」
「あーもーあーもー。
言った瞬間、肩に手が置かれ、デリリウムの一切合切が止まった。視界の端に、華奢な指先が見える。おまけに見知った指輪が、その中指の根元で不吉に輝いている。
「
聞き覚えのある声に呼ばれ、錆びついた人形のように、ぎりぎりと首だけで背後を振り向いた。そこには旧知の仲のモルトマンが、記憶の通りに下卑た笑顔で立っている。何たる気色の悪さか。
「勇者に殺されたって聞いたぞ。何でピンピンしてんだよ」
「そんな簡単にくたばる訳ないじゃーん」
起床時に見た
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