第1話 特別捜査部隊『blade』
正村一鷹(まさむらかずたか)は天才だった。その才能が、世のため人のために使われていることは、人類にとって幸運なことだった。彼は三十歳で警視庁に入庁後、わずか五年で警視庁捜査一課の管理官にまで上り詰めた。他に例を見ない、異例の出世スピードである。
正村は推理の天才であった。彼は情報さえ与えられれば、どんな難事件も解決して見せた。彼の存在がなければ、迷宮入り確実だったとまで言われた事件も数多くある。彼の実力は、自他共に認めざるを得ない次元のものであった。
その日、捜査一課のオフィスは、緊張感ではなく、とある期待感であふれていた。人事発令のうわさが流れていたからだ。今回の目玉は他でもない、正村一鷹であった。先日も、難事件を解決したばかりであり、理事官への昇進はもちろん、捜査一課長への飛び級さえ囁かれていた。もし実現すれば、彼はさらに大きな名声を得ることとなる。一課のみならず、警視庁のほとんどの職員が、その話題で持ちきりであった。
「正村管理官、桑名長官がお呼びだ」
現捜査一課長から、長官直々の人事の合図が出る。盛り上がる周囲の様子を気にもせず、正村は長官室へ向かった。彼を称える仲間たちに反して、正村の心中は冷静そのものであった。それは、彼にとって、今回の昇進は当然の結果であるという、
強い自信の表れであった。
*****
「特別捜査部隊『blade』ですか!?」
常に冷静沈着であるはずの正村が、明らかに動揺を見せた。
「ああ、君を隊長に任命する」
低い声で言ったのは、他でもなく、長官の桑名宗影(くわなそうえい)であった。最低でも理事官への昇進を確信していた正村にとって、桑名から言い渡された人事には、納得がいくはずもなかった。長官直々に用意された彼のポストは、まるで幼少期に親しんだ特撮戦隊モノの作品のような響きであった。
正村は無意識に、桑名を睨みつけていた。
「珍しいじゃないか。君がそこまで感情を表に出すのは」
桑名は正村の無礼を責めることはなく、余裕の対応を見せる。
「まあ聞け。これは、天才である君にしか任せられない任務だ」
咳ばらいを入れてから、桑名は正村に語り始める。
――この日、正村は今までの人生でしてきたより多く、驚愕させられることとなる。特別捜査部隊bladeは、警察内部でも存在を明かされていない秘密組織であり、とある“銃”の取り締まりを行うことを目的とした、桑名長官直轄の部隊であった。
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