第4章 『カモミールの想い ー 蔦の想い』
アタシの心とは裏腹に、
優しい風が花の香りが頬を撫でる。
お城から出ようとした時、
さっきの若い奥さんが手招きしていた。
テミは何かを察して、先にミミと共に外へ出た。
「先程は、ごめんなさい。
主人、あなたのお爺様が
あんなきついことを言って…」
あの人があんな風に言うのはわかる。
アタシもその立場だったら、
同じことをしていたと思う。
「…髪色は違えど、顔はあの子にそっくりね」
その顔は、
優しさと悲しさが混じっているようだった。
「実は、
あなたの母親と手紙のやりとりを
こっそりしていたの。
それで、
あなたがいるってことも知っていたわ」
そっと握ってきたその手は、
どこか懐かしく感じた。
「けど…ごめんなさい。
あなたを助けに行けなくて」
アタシには知らない、優しい涙。
それがひとつ、またひとつと手に落ちる。
「あなたの母親は、
『黒百合の地』と呼ばれるとこにいるわ。
けれど、気をつけてね。
あそこは魔族の地でもあるわ――」
――――――
アタシはノクタの手を繋いだまま、
母の故郷を後にした。
「ルナとノクタが戻ってきたみたいですよ」
「ルナ!大丈夫?
なんか酷いこと言われてない?」
「大丈夫だよ。
それより、アタシのお母さんがいる場所を
教えてくれたの…」
その場所を伝えると、
テミが珍しく嫌そうな顔をしていた。
「『黒百合の地』ですか…」
「ああ。結構、この旅危険かもしれねぇな」
「そんなやばいとこなの?」
「やばいも何も、
噂ではSS級でも
近寄ることすら嫌がるレベルだ」
テミがミミを心配そうに見つめる。
それもそうだよね。
ミミはお姫様だもん…
「ん?どうしたの、テミ?」
「そりゃあ、お前。
お姫様をあんな危険なとこ
連れて行けるわけないだろ」
「もう!みんなミミのことバカにしすぎ!
ミミなら大丈夫!任せて!」
「……この調子では、
何言っても聞かなそうですね」
アタシ達はその足で、
そのまま『黒百合の地』へ向かった。
「そろそろ疲れましたし休憩しましょうか。
確かこの先に、ハルヴァイク…
人間の村があったと思います」
ノクタの動きが少し止まり、
目が泳いでる気がした。
「大丈夫、ノクタ?疲れた?」
「え…あ、ああ。大丈夫だ」
「ハルヴァイクって確か、
お魚が美味しいとこだよね!楽しみ〜」
ミミはまた食べ物のこと考えてる…
なんて言ってるうちに着き、宿に荷物を預けた。
「人間ばかりの村だけど、
ゆっくりしてってくれ」
「ここら辺に美味しいお酒と、
お魚が食べられるお店ありません?」
宿のおじさんに教えてもらったお店に行き、
旅の疲れを癒していた。
「どれも美味しいっ!」
「あまり飲み過ぎないようにしてくださいね」
「ミミは良く食べるねぇ」
ノクタはどこか落ち着かない様子だった。
その理由がわかったのは、
みんなが程よく酔ってきた頃だった――
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