第3章 『真実の罪 ー 月の目指す場所』


「あの石は結局なんだったんだろう?」

 

「さあな?ただ、魔力を感じてた。

でも、なんのだかはわからねぇんだよな…

てか、ルナお前その目で見えるんじゃ?」

 

「確かに、

コンタクト外せば見えなくもないけど…

そんな石ころを

凝視して見たりなんかしないよ」

 

「まあ、

それで思い出せたんならいいんじゃね?」

 

「なんか、ノクタ嬉しそ……?」

 

「あ?」


 

あれ?なんかちょっと照れてる気がする。


 

「それよりアタシ、

テミとミミにも謝んなきゃ!」

 

「はー、まだ朝早ぇよ…もう少し寝てようぜ…」

 

「もう!ノクタ!くっつすぎ!」


 

ノクタってこんな甘えん坊だったっけ?


 

「朝ごはん作ってあげるから

それで許して…ね?」


「……しゃーねぇな」


 

不満そうにしながらも椅子に座るノクタ。


 

「…キッシュがいい」

 

「えー。朝からー?

目玉焼きとパンでいいじゃん」

 

「昨日、「寝るのがこわ〜い」って言うから

泊まってやったのに」

 

「いや、頼んでないし。あとうざい」

 

「いいから作れ。デブ乳」

 

「ずっと思ってたけど、そのデブ乳やめて」


 

マジムカつく。

けど、余ったらテミとミミにあげられるし作ろ。


あの頃作っていた下手くそなキッシュとは違い、

今は自慢できるくらい

上手に焼けるようになった。


 

「…美味いな」

 

「そりゃあ、ルナちゃんお手製ですもーん!」


 


余ったキッシュを持って、

アタシ達はテミとミミが住んでいる家に来た。


 

「あれ?ふたりしてどうしたの?」

 

「ちょっと話したいことがあって…」

 

「って!ルナのキッシュじゃん!!

朝ごはんまだだったから食べよ!」

 


「ミミ、お口に入れすぎですよ」

 

「美味しくって……つい」


 

……うさぎ族なのに頬袋?


 

「で、話ってなんですか?」


 

アタシは昨晩、

夢で過去を思い出したことを話した。


 

「ごめん。ふたりのお陰でアタシ変われたのに、

全部忘れちゃって……」

 

「なんだー!そんなことぉ?

テミもミミもそんなの気にしないよ!

それに今ルナが幸せならそれでいいじゃん!」

 

「ミミの言う通りです。

それだけ、ルナにとって

過去が辛かったってことですし」

 

「テミぃ、ミミ〜」


 

ああ、またふたりの優しさに心が救われたな…


 

「それで、

お前はこれからどうするのかも

言うべきなんじゃ?」

 

「あ、そうだった!

それで、どうしても知りたいことがあって


…両親のことなんだけど、

なんでアタシを捨てた

――追い出したのか知りたくて」


 

正直、理由を知る怖さもあった。

だけど、わからないまま終わるのも嫌だった。


 

「だから、アタシ…旅に出ようと思う」


 

ミミが紅茶を飲み干すと、


 

「そういうことなら、ミミもついていくよ!

テミも行くよね?」

 

「ええ。私は『監視役』ですので」

 

「ノクタは言わずとも…」

 

「行くに決まってるだろ」


「みんな、ありがとう……!!」



こうしてアタシ達は旅に出た。


 

その先に、地獄があるとは知らず――


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