第十六話[結局誰だよ]~白焉修道院篇~


 食堂での食事を終え、皆自分達の部屋へ戻った。

「いやぁ、ここのご飯はうめぇのなんのって」

「この修道院の料理長はすごいんだぞ!だって、隣町の雲泥街うんでいがいの有名レストランのシェフだったらしいんだぜ」

 よっぽど料理が美味しいのか、珀爾はムキになって皓暉に語った。

「そう!佐古さこたすく先生って言って、大焚先生が、ひきぬき?かなんか知らないけど連れてきたらしいよ」

 『煌橙が居て良かったぜ…珀爾と二人っきりだと疲れそう……』

 と、初日なのに皓暉はひっそりと思っていた。

「あ!話は変わるんやけど、さっきの食堂での話で、りゅーせい?って言ってたやん。そいつ誰だ?」

 珀爾は指を指した。龍惺の仏壇だ。

「仏壇?どういう事だよ、」

「説明するね。今から一年前、この部屋にはもう一人いたんだ。東雲龍惺ってやつがね。そいつは僕達の兄弟みたいなもので、ずっと一緒に育ってきたんだ。あの時までは……そう…あの時までは」

 煌橙は、声が震えだし、涙で前が見えなくなった。皓暉は驚いて、咄嗟に珀爾の方を向いた。珀爾も、もちろんぐちゃぐちゃになって泣いている。

「お、おいっ!どしたんだよ!まっ、まぁ今日はいいやっ!よし!早く寝よう!おやすみ!」

 皓暉はどうしていいか分からなくなり、ベッドに寝転び、布団にくるまった。

 『なんか、俺のベッドだけ新しいなぁ…ま、気にすることないか』

 涙が引いた煌橙が再び話そうと、皓暉の方を見た。が、おもっくそ寝ていた。

「おい、お前泣かすなよ!」

 珀爾も泣きやみ、二人っきりの沈黙が続いたが、二人は同時に言った。

「「寝るか」」

 そして、皓暉の修道院生活一日目が幕を閉じたのだった。

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輪廻 五月兎夢 @Tom_Satsuki

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