第1章 王位継承の資格 婚約者の出現 2

 リンネの助けを求める声を聞いて、アーサーは焦っていた。

城の中なので気を抜いていた。安全だと思い込んでいたからだ。何重にも結界をはっているので、外部から不審者が入ることは不可能だ。


なのに不審者が侵入している現実がある。王女を連れ帰りすぐに暗殺されることがあってはならない。それはこの国が崩れ落ちるのだ。王弟がいるとはいえ、悪巧みをする悪辣な人物だ。国を任せることはできない。

 

もし内部に暗殺者がいるのなら王弟が疑わしい。前に王の暗殺を企てようとした犯人がいた。それは王弟側につく貴族が捕まった。


噂では王弟が黒幕ではないかと噂された。捜査をしても上手く逃げのびて尻尾を掴めなかった。だが怪しいのは間違いないのだ。


今は王女を助けることに専念しなくてはならないとアーサーは思った。結界のせいでアーサーでも瞬間移動ができない。


しかしアーサー自体の魔力は王族に等しいくらいの強いものだ。王族の魔力は計り知れない。その力はアーサー自身も知っている。だからこそリンネも何とか、その力で持ちこたえて欲しいと。それを願うしかないのだ。

アーサーは1つずつ結界を壊していかなければならない。


一方、部屋の中では、侍女にリンネが羽交い絞めをされていた。侍女はナイフを出して刺そうとした。


「きゃー!」


リンネは声を出したが、恐怖のあまり動けない。そして無意識で体に力が入ると黄色い光を放って、その途端に侍女を弾き飛ばしていた。侍女は床に叩きつけられた。逃げ場がないリンネは、部屋の端に寄って震えながら大声を出した。


「助けて!」


扉の外には誰もいないかも知れないが、叫ばずにはいられなかった。侍女は起き上がって両手の手のひらをリンネに向けた。何もない所から無数の光のナイフが飛んできた。その1本が右頬をかすめた。


リンネの顔色が変わった。(死ぬかもしれない)と心の中で自分に言っていた。

すると侍女がもう1度手をかざす。光のナイフの数が増えていた。


「いや!」


また目を瞑るとリンネのバリヤのような光が、またナイフを弾いて侍女の方向へ飛んできた。侍女は高く飛び上がりナイフを避けた。


その途端、扉が破壊されてアーサーが怒りの眼差しで侍女を睨んだ。侍女は逃げようとしたが、アーサーに取り押さえられえた。


執事に近衛兵を呼ぶように言っていたので、近衛兵がすぐに現れた。侍女を引き渡してリンネに駆け寄った。

リンネは部屋の隅で震え目も開けられずにいた。アーサーは跪いて優しく言った。


「もう大丈夫だ。私が油断したばかりに危険なめにあわせて、すまない」


リンネは目を開けるとアーサーがいた。怖くて抱きついて泣き出した。

そこに壊された入口から美しく着飾った女性が入ってきた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る