自主企画参加型 参加作品

小説描光

かし

時計の針の音が部屋中にちいさく鳴り響いている。

嫌でも時間が流れていることを感じさせてくるみたいだ。

今は何時で、何分経ったのか見なくても分かってしまう。

電話から大ヒットCMソングのアラームが流れる。

その合図で今日もまた病院に向かいに行く。

いつものことだ


1日に1回、15分程度面会の権利を与えられる

余命半年を言い渡された彼に今日も会いに行く

一世を風靡した1,000年に1年のイケメン。とても病にかかってるとは思えなかった。

いつものように着替えなどの日用品と彼の大好きなムーンライトを差し入れする。

ムーンライトを手渡すと彼はいつものように笑顔になって1枚ほおばる。

こんな生活の中で幸せそうな彼の顔を見るのはこの時くらい。

食べ過ぎを注意されて、今は1日1枚しかダメだけど。

あっという間に15分が経っていて退出するように言われた。

こんな感じでまた今日が終わる。




電話から人気CMソングのアラームで目を覚ます。

顔を洗って、ご飯を食べて、かわいくメイクして

いつもと変わらない朝のルーティーン。

いつもは鳴らないピンポンが鳴る。

インターホンを覗いてみると画面には警察官が映っていた。

突然のことに驚きをかくせないまま玄関に向かう。

ドアを開ける手が震える。何もやましいことはしてないのに。

開けると警察官が2人立っていた。

「人気アイドルさんのお家であってるかな?」

彼のことでなにかあったんだ...

「はい、そうですけど...なにか...?

もう1人の警察官が答える。

「彼、人気アイドルグループの芸能プロダクションに所属していたでしょ?」

答えるように頷く

「まだニュースにはなってないんだけど、そこの芸能事務所と犯罪グループの関与が裁判で認められてねえ、今彼も刑務所に勾留してもらってるの。だから家宅捜査させてもらえる?」

突然のことに頭が真っ白になりながら応答だけする。

警察官が家を捜査している最中、突っ立ってることしか出来なかった。




家宅捜査では何も見つからなかったが、彼が自白したことでそのまま裁判になり刑務所での実刑を言い渡された。

電話から流行ってるCMソングのアラームが流れる。

その合図で面会に行く

いつもじゃない場所へ



月に1回、15分程度の面会の権利が与えられる。

余命1か月を切った彼に会いに行く。

「なにがあったの...?」

彼に何を聞いても帰ってこない。

...

彼が口を開いて言った

「もう会えなくなってごめん...」

その言葉を聞いた後に退出するように言われた。




電話から大好きなCMソングのアラームが流れても体が起きられない。

いつもは切ってしまうフレーズまで聞いてしまう。

嫌な歌詞、嫌いになっちゃった菓子。

「いつまでも一緒にいるよ♪」

...もう会えないのに何度もそのフレーズを聴いてしまう。

...いつまでも

...一緒

...いっしょ


こんな単純なことどうして思いつかなかったんだろう♪

彼に会いに行けないならばこっちから会いに行けばいいじゃない♪


駅前で見つかるように目立つ場所で1人ぐさり

またいつもがはじまる















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