真珠は新見ととても相性がよい
真珠は叫びながらも、なんだかんだで坂をクリアした。
「っはー……ぜっっはー……死ぬかとおもた」
「乙。あと一段落とせたら、楽だけどな」
「ほんそれ!もう一個か二個おっきいギヤほちぃな」
(フリーは変えられんし、フロント小さいやつにするのが現実的か。
ショップのお助けジャンク箱に転がってないかな……)
「てか、意外と粘れたっしょ?あたし」
「一か月であのへっぽこぶりからこの成長。拍手もんだよ」
「えへん!」
***
真珠ん家で、インスタントフォーの上にサラダと鶏むねスライスをどーんと乗っけて食べる。
「これ、ここん宅に置いといて」
「ペッパーソース?」
「うん。激安だけど美味いぞ」
「どれどれ、ん〜辛い!でもフォーに合う!飯ウマっ」
***
「ここでパクチーあったら完璧だった」
「え、やめて。あたしパクチー無理。あれカメ虫の匂いじゃん」
「おいおい、筬島、カメ虫食ったことあるんか?」
「ないし!てかあるの!?」
「俺は、ある!」
「は!?きもっ!」
新見が、爆弾を投下する。
「行動食にさ、ブリトー食ってたらよそ見してるうちにカメ虫が混入」
「ギャーーっ!」
「まずな、すごい破砕感くる。バリッと、あれはエビ殻とカニ殻の中間くらいかな。で、消毒用アルコール級の刺激MAX。そして口内はカメ虫臭でいっぱいに」
「気持ち悪ぅー!はいはい、寒天いこ寒天!口直しー!」
「あ、いいな。食べる食べる」
黒蜜かけた寒天&バナナスライスを食べながらふたりで爆笑。
食べ終わったら新見がササッと食器洗い。
「お、新見、ありがとー」
「いや、家でもやってるからな」
戻ってきた新見に、真珠がソファでポンポンと隣を叩く。
座るなり、がばっと抱きついてきた。
「へへっ、新見って抱き心地いいんだよね〜。芯があって硬質でさ。自分の体と混ざらない感じが、いいんだよね」
(あー、お互い様だな。柔らかくて重くて、混ざらない、それだわ)
真珠が耳元でささやく。
「……だっこで連れてって?」
新見は腕を伸ばしてぐいっと真珠の足を自分の腰のあたりに跨らせる。
「掴まってろよ」
言うなり、真珠の尻を両腕で支えて立ち上がった。
「あはは、セミ!セミだあ」
ベッドに着くと、真珠が笑いながらねだる。
「ぽいして!ベッドにぽーいって!」
軽く放ると、ポヨンと跳ねて
「きゃはっ!」
と子どもみたく喜んでから腕を大きく広げた。
「んでさ、新見はシャツだけガバーッて脱ぎながら迫ってきて。わかる?そういうの」
真珠はしたいこと全部口にするタイプだ。
「……少女漫画かよ」って思いながらも、新見は即興でイケメンムーブのロールプレイ。
「わあ、男臭ーい!わたし、新見をたくさん補給するぅ……」
すんすんしていた真珠がとろんとした目で言う。
「ねえ、新見、チューしてみようよ」
「え。キスは、ほら、俺とは違うんじゃないの?」
「今日のわたしは今日のわたし!そういう気分なの!ほら……」
えーい、ロールの続きだ!と新見は真珠の顎をくいと持ち上げてから、そっと口づけた。
***
真珠は新見に、まるで小さな少女を扱うように、いつも軽々と体位を替えられてしまう。
それがなんだか自分が初心な女の子になったような錯覚を覚えて、嬉しかった。
真珠は今日も新見と波がピッタリだった。
(あー、最っ高!新見とわたしって、マジ相性抜群じゃね?いつまでも仲良くしたいなあ)
かりっこりの背中を抱きしめていた腕を外すと、新見の前髪辺りを触る。
新見が首を上げると、言った。
「新見ってまつ毛長いよね~、うらやまし。だけど足とか、すべすべだよね。」
「ああ。剃ってるからな」
「えー、うそ!メンズエステ的な?」
「いやいや、中学ん時、うちローディ一家でさ。俺中学ん時から剃ってるから。もう習慣」
「はあ。マジか。剃刀負けしないの?」
「最近の5枚刃とか、怖ろしいくらいスルっと剃れる」
「そもそも、なんでローディって、足の毛剃るの?」
「怪我した時に手当てしやすいとか、マッサージしやすいとか、あと空気抵抗減らすとか?」
「くうきていこう?!」
真珠はゲラゲラ笑う。
「いや、マジだって。あるメーカーが風洞実験したら、なんと7%の軽減」
「わはははははっ!」
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