第33話 ミナ・シュナイツ その3


 昼休みになると、私は体育館裏に足を運ぶ。

 最近はクラスメイトの男子たちの誘いを断ってここに来ている。


 ──だって、可愛い生き物がいるんだもん。


「にゃー、シュナイツさん遅いにゃー」


 そこには、猫とお話ししてる天峰さんがいた。

 この人、尊すぎるっ。


 ***


 天峰さんの事を知ってから、彼女の見方が変わった。

 一見すると、近寄りがたい雰囲気を醸し出している天峰さんだけど、その実、猫とお話ししてしまうほど可愛らしい一面がある。

 以来、彼女にツンとした言動を取られても、でもこの人猫とお話ししてるんだよなぁと思うことで、にやにやしてしまうようになった。


 それがきっかけで、何度も話しかけているうちに、今では天峰さんと一緒にお昼ご飯を食べる仲になった。


 私が勝手に思ってるだけかもしれないけど、友達、のような関係になれた気がする。


 ***


 体育倉庫の側に設置されたベンチで天峰さんとご飯を食べる。

 天峰さんはお弁当を持参していて、私は購買で買ったパンがお昼ご飯だ。


「天峰さんってもしかして自分でお弁当作ってる?」

「えぇ、」

「え、すごっ」

「そうかしら?」

「私は全然料理できないよ? だからすごいと思う!」

「あなた単体と比較されてもね」


 そう言って、天峰さんは取り出した箸を使っておかずを口に入れる。

 そのときの天峰さんは、箸の持ち手で、おかずを取っていた。


 照れてるのかな?


 そんなほのぼのとした事を思っていると、私たちの元に人がやってきた。


「朝ちゃん。ここにいたの?」


 目を向けると、そこにはあの善光寺紗世さんがいた。


 で、でか……。

 何がとは言わないけど、とにかくでかいと思った。


 善光寺さんは、隣にいる私に目を向ける。


「シュナイツさんも一緒なんですね。いつの間に仲良くなったんですか?」


 そうにっこりと笑顔で言う善光寺さん。

 この人は本当に人当たりがいい人だ。


 天峰さんは自分の髪を人差し指でくるくるといじる。


「別に仲良くはないわ。ただ世間話をしてるだけ」

「そうなの? とっても仲良しに見えるけど?」

「とても不愉快ね」


 そう言う天峰さんはこっちを向いてくれない。


 照れてるのかな?


 私は善光寺さんに尋ねる。


「善光寺さんって、天峰さんと仲良かったんだね」


 それはとっても意外なこと。

 学園1の人気者の善光寺さんと学園1の嫌われ者の天峰さんの間に交流があったなんて。


「仲がいい、といいますか」


 善光寺さんは、ベンチの後ろに回って、天峰さんの両肩に両手を置く。


「わたしたちは幼馴染なので」

「そ、そうなんだ……」


 二人の近い距離感。

 それを見て、私はモヤモヤする。


 ……何だろう。この気持ち。


 そこで善光寺さんが手を叩く。


「そうだ、シュナイツさん。わたしとも友達になってくれませんか?」

「……え」


 突然の提案に私は動揺する。

 友達?

 そんなの、

 そんなの……。


「う、うん……」


 私に2人目の同性の友達ができました。


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