第18話 Birthday Present for My Sister その9
紗世ちゃんからメッセージが届いた。
『どうでしたか?』
なんと返せばいいのだろうか。
いや、考えるまでもないか。
『ダメだった』
送ると、すぐにメッセージが返ってきた。
『今から会えませんか?』
***
夕暮れ。
待ち合わせ場所の公園に紗世ちゃんは先にいた。
紗世ちゃんは制服姿だった。
公園内に設置された長椅子に、オレと紗世ちゃんは、腰掛ける。
「……ごめん」
今日あった妹との出来事をすべて話してから、とりあえずオレは謝った。
「紗世ちゃんがオレと朝の仲を取り持ってくれるって話だったけど、ごめんな」
そして、内心思っていた事を伝える。
「──どうも、ダメそうだ」
今日、久しぶりに妹と接して理解した。
これもう、修復のしようがない、と。
「……お兄さん」
失望させてしまっただろうか。
情けないのはわかる。
けれど、これは本当にどうしようもないことなのだ。
すると、紗世ちゃんは立ち上がった。
「……っ⁉︎」
そして、オレの顔を引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「──お兄さんは何も悪くありませんよ」
柔らかな感触が顔を包み込む。
「わたしがいけないんです。わたしが無責任な事を言って、お兄さんを焚き付けてしまったから」
耳元で紗世ちゃんの声が頭に染み込むように囁かれる。
「お兄さんと朝ちゃんの距離感を考えずに間違った方法を押し付けてしまいました」
「……」
紗世ちゃんに抱きしめられて、オレは口を開けない。
「もっといいやり方があったかもしれないのに」
「……」
軽い酸欠からか、それとも本心では他責を望んでいるからか、オレは何も考えられなくなる。
紗世ちゃんのいい香りに包まれて、頭がおかしくなりそうだ。
「力になれなくて、申し訳ありません……」
「……」
……あぁ、音が聞こえる。
この音は紗世ちゃんの心音か、それとも──
頭がくらくらする。
さっきまでの不安や悲壮感は、いつの間にか頭の中から消えていた。
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