第17話 Birthday Present for My Sister その8


「──今日、誕生日だよな?」


 オレがそう口にすると、妹は訝しげな視線をオレに向けた。


「なに、急に…」


 それはそうなるか。


「いや、何年も祝ってなかったなって思ってだな……」


 なんと言えばいいのか分からず、たどたどしくなってしまう。


「ほら昔はよく何かあげてただろ?」


 そしてオレはバックからプレゼントを取り出した。


「だからプレゼントってことで、これ」


 我ながら、下手くそだと思った。


 けれど、これが今のオレの精一杯だ。


「……」


 妹はプレゼントを見つめるが、手を伸ばすこともなく、淡々と口を開く。


「いらない」


 そして靴を脱いでそのまま家に上がってしまった。


「……っ」


 わかっていたことだが、オレと妹の間にできた溝は大きい。

 このままでは自室に戻られてしまう。

 そうなったら……。

 そうなったら?


 ……あれ、てか、どうしてオレは妹と仲直りしたいんだったか?


 別に仲直りなんてしなくとも、普通に生活を送れるじゃないか。それに嫌がっている妹に無理して干渉するのはどうなんだ?

 オレにはオレの場所があって、妹には妹の場所がある。

 ならば割り切ってしまえばいいではないか。

 そうだ、そうしてしまう。

 その方が楽でいい。

 

「待て」


 けれど、オレは妹の腕を掴んで呼び止めていた。


 違う。

 そうじゃないだろ。

 人に、それも家族に、嫌われているのなら、直す努力をすべきだろ!


「……なに」


 不機嫌にオレを睨む妹。

 たが、オレは知らなければならない。


「オレは、お前に何かしたか?」


 数秒の沈黙だった。


 けれど、答えが返ってくる。


「……別に」

「じゃあ、なんでオレを避けるんだ?」


 妹は冷たい視線を向ける。

 そしてため息をついた。


「兄さんのことが──嫌いだから」


 シンプルな答えだった。

 わかっていた。

 けれど、それを直接聞いて、オレの心は一気に沈んでしまう。


「どうして、嫌い、なんだ……?」

「しつこいっ‼︎」


 そう言って、妹はオレを手を思いっきり振り解いた。

 その際、妹の手があたり、持っていたプレゼントが落下する。


 中身のマグカップが割れた音がした気がした。

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