第16話 Birthday Present for My Sister その7


 6/10。

 ついにこの日が訪れた。

 今日は妹の誕生日である。


 朝起きると、紗世ちゃんからメッセージが送られていることに気づいた。


『ファイトです』


 オレは机の上に置いてある妹へのプレゼントに目をやる。

 熊のキャラクターが描かれたマグカップ。

 箱に入れられ、プレゼント仕様にラッピングされている。


「さてと」


 ガラではないが、一丁気合をいれますか。


 オレは自身の両頬を叩いた。


 ***


 といっても、妹は既に学校へ行ってしまったので、家にはいない。風紀委員の仕事があるため早めに登校しているらしい。

 元々帰ってきた時に渡すつもりだったので、何も問題はない。


 学校の昼休み。

 オレは、パンを食べている後輩に紙袋を渡す。

 後輩は首を傾げてきょとんとした。


「これは?」

「プレゼントだ。前に言っただろ?」

「あ、あー」


 何故か後輩は動揺を見せた。


「……遅いです。あれから一週間以上は経ちましたよ」

「貰ってる分際で文句言うな」

 

 ほんとこいつには紗世ちゃんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


「お目に叶わなかったら、捨ててくれ」

「……」


 後輩は呆然と紙袋を見つめる。

 それから抱きしめた。


「いーえ、捨てませんよ〜だ。ガラクタだったらガラクダだったで先輩をイジり倒してあげます」

「……お前、性格悪いな」


 後輩は袋を開けて中身を取り出すと、嬉しそうに笑った。


 ……そんなにオレをいじり倒したいのか。


 ***


 学校帰り。

 家の前で妹とバッティングした。

 紗世ちゃんの情報通り、今日の妹には用事がない。


 いつもなら、妹に「死ね」と言われて終わるところだが、今日は違う。


「死──」


 妹の言葉より先に、オレは動いた。

 玄関の鍵を解錠し、扉を開く。


「……」


 そんなオレの行動に、妹はきょとんとした目をした。


「どうした? 入らないのか」


 呆然としていた妹だったが、すぐにいつもの冷たい表情を取り戻して、家の中に入る。


 その後にオレも家の中に入り、扉を閉めた。

 そして座り込んでローファーを脱いでいる妹に言う。


「──今日、誕生日だよな?」


 そのときのオレの手は、少し震えていた。

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