第9話 天峰夜の気付き


 中間テストが終わり、いつも通りの学校生活が戻ってきた。

 テスト期間は学校が早く終わるから最高だと言う者もいるが、それは良い成績を治めることを諦めている者たちの言葉であって、学校が早く終わろうとも基本的にはテスト勉強をしなければならない。

 成績が落ちたらゲーム没収という教育方針の家に生まれたオレには、ただただ苦痛の期間でしかなかった。


 ここは屋上に通じる階段。

 昼休みにオレとルーク、そして後輩は階段に座って昼食を取る。

 ここはオレしか知らない穴場だったが、いつの間にかこうして3人で昼休みを過ごす場となっていた。

 オレは隣に座るルークに言う。


「そうだ。例のゲーム、今日リリースされるからオレの家でやらないか?」

「お、いいね──と言いたいところだけど僕、風紀委員会に入ったんだよね。しばらくは活動があるみたいで、遊べそうにないんだ」

「そうか」


 人の良いこいつのことだ。おそらく誰かに頼まれたのだろう。


「なら仕方ないな。後輩、今日はオレたちだけで遊ぶか」


 下の段に座っている後輩にそう言う。

 しかし、後輩は何故か顔を逸らした。


「えーいやー、その……」

「?」


 ***


 赤点を取ったのだという。


 ……あいつ、バカだったのか。


 うちの学校では赤点をとった教科では補習授業が行われる。今日からしばらくの間、後輩はそれに参加しなければならないそうだ。


 学校からの帰り道。

 オレは1人で下校する。

 帰ったら当然ゲームをする。

 テスト期間でゲームを封印していたからな。その反動からか、今は無性にコントローラーを握りたい。

 ルークと後輩がいないので、今日は思う存分ゲームができる。


「……」


 しかし何故だろうか。


 ──全くワクワクしない。


 ここ最近は毎日のように誰かとゲームをしていた。誰かと何かをするということは当然のことながら、自分の行動に制限がかかるということで、オレはそれを鬱陶しいと思っていた。

 そのはずだ。


「まさか寂しい、のか?」


 オレが?

 少し前までは、1人が当たり前だったではないか。

 どうして今になってそう思うんだ?

 そんなの決まっている。


「……そうか、なんだかんだ言って、オレは楽しかったんだな」


 ルークと後輩とゲームしている時間が楽しかった。

 だからこんなにも物足りなく感じるのだ。


 自分は1人が平気だと思っていた。

 けれど違った。

 オレはただ、1人が平気なフリをしていただけなのだ。


 それに気づけただけでも、自分は幸運なのだと思う。


 ***


「そういえば──」


 オレはとある事を思い出して、スマホを取り出した。

 そしてメッセージアプリを開く。


 次の休日。


「お、お邪魔します!」


 妹の友達、紗世ちゃんがうちにやってきた。

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