第2話 妹の友達


 最近、妹のオレへの当たりが強い気がする。


 朝起きて出くわせば鋭い眼光で、

「死ね」


 寝る前に出くわせば冷ややかな視線で、

「死ね」


 ご飯を食べる時も、

「死ね」


 思春期なのだろうか。

 なら仕方ないな。うん。


 ……けど死ねは流石に酷すぎないか。


 昔は大きくなったらお兄ちゃんと結婚すると言ってくれた妹だが、今では死ね死ねbotと化している。

 一応、「シーネ」が挨拶な国や地域を調べているが今のところ見当たらない。


 ……時の流れは残酷なものである。


 ***


 玄関で妹とエンカウントした。

 妹はオレを見るなり不機嫌そうに舌打ちすると、いつもの挨拶をかましてくる。


「死ね」


 シーネ〜!

 そう返しかけたが、すんでのところで思い止まった。


 そのまま妹はオレの横を通り抜け、自室に向かう。


 そのあとに続く黒髪セミロングの少女が1人。


「お兄さん、落ち込まないでください。朝ちゃんも本気で言ってる訳ではないと思いますから」


 その少女は立ち止まると、オレの耳元でそうささやく。

 彼女は善光寺ぜんこうじ紗世さよ

 妹の友人である。


「わたし、お兄さんと朝ちゃんが昔みたいに仲良くなれるよう協力します」


 そして紗世ちゃんは可愛らしくガッツポーツをとると、これまた可愛らしくこう口にした。


「だから、ファイトです」


 揺れる大きなたわわ。

 とても妹と同じ中学2年生には思えない。


「──っ」


 このとき、オレは確信に至った。


 天使は実在するっ!

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