ツッコミ勇者

サラブレッドサラダ油

第一話

 この物語は、僕ら勇者パーティーが世界を救うために葛藤する、平凡とは程遠いい物語である。


1日目 前半


 この世界は魔王に支配されている、魔王は魔物を手下につけ、村の食糧や娯楽品を奪っていってしまうのだ。


 しかも、最近は魔王の側近の上級悪魔どもが暴れまわっているようだ、平和に暮らしたい僕ら村人にとっては非常に迷惑な話である。


 僕の名前はシルク・フレイス、この村"サイショノ村”の若者である。


 サイショノ村では魔王に対抗すべく勇者を選抜することになり、僕ら村人は集められたのである。


 勇者になる為には、村の中心にある台座に刺さっている、勇者の剣と呼ばれるやけにギラギラした龍の装飾付きの剣を抜かないといけないらしい。


 勇者の剣を抜けば、魔王を倒す資格が与えられる、何故そのような剣がこの特徴のない村にあるのか不思議である。


 他の村人が我先にと並ぶ中一番最後に並んだ。


 なぜなら、僕が平凡すぎるからである。


 何をしても平均的な僕に、勇者の資格があるはずがないし勇者になんてやりたくない。


 僕にできるのは精々ツッコミくらいである。


「おいシルク、何ボーッとしてるんだ? 剣でも食いたいのか?」

 

 この発する言葉がよくわからない奴はツァーリ・ヴェルマ。僕の友人で、筋骨隆々の筋肉ダルマである。勿論脳筋である。


「人間に剣が食えるわけないだろ! フリにもならない変なことを言うのはやめろ」


 僕は勢い良くベシュラリッッと音を立てツッコミをした。うむ、今日もいい音だ。

「やっぱシルクのツッコミはいてぇ。俺じゃなかったら腕折れてたぞ!」


「そんなわけないだろ。冗談はいいから、ほら、次はお前の番だぞ。」


 僕はツァーリの後ろを指さしながら言った。どうやらまだ剣は抜けてないらしい。


「次は俺の番なのか、もしかしたら俺なら剣抜けちゃったりするかもな、その時はお前を戦士にするから頼むぞ。」


「確かにお前なら剣抜けちゃえそうだな、でも僕は戦士なんて危険なことしないからな。」


「じゃあ行ってくる。」


 ツァーリはそういって、剣の柄を握り思いっきり引っ張った。引っ張った瞬間に地面は割れ轟音が響き渡り、近くの建物にヒビが入り始めた。


 僕はこの世の光景ではないと思った、あまりにも現実離れしすぎてたからだ。そして勇者の剣の柄は凄まじい握力の圧力で潰された。


 この間約10秒である、僕の幼馴染は人間の皮を被った化け物かもしれない、いや化け物である。さすがにやばいと思ったのか村長が止めに入った。


ツァーリは悔しがっていたが、僕に親指を立て笑って言った。


「俺の仇を取ってくれシルク」


 僕の幼馴染が託してくれたなら僕も本気でやるほかないだろう。


 僕は壊れかけ寸前の柄を握ってみた、剣は抜けた。


 もう一度言う剣は抜けた。


 なぜか握ってみただけで剣は抜けてしまったのである、つまり僕は勇者になってしまったのである。

「いや、何で僕なんだよ!!」


 僕は自分にツッコミを入れた、ベシュラリッッと綺麗な音を立てた。

 

 僕の腕は折れた。

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