強烈で美しい一瞬の煌き、短歌その素晴らしい世界を( ;∀;)

前編8首、中編12首、後編15首の、全35首のアンソロジー。

筆者である滝口アルファ様は、今回のカクヨム短歌賞に様々な作品を投稿されています。間違いなくカクヨムでは第一線を突っ走っておられる代表的歌人の一人です。

現代短歌の持つポップさやユニークさ、さらにはエモさなどの感性をお持ちになりながら、独自の世界観をしっかり構築される事で、より高度で詩的なオリジナル短歌の世界を確立されております。

こちらのアンソロジーにおいても前編「彼岸花」、中編「罠」、後編「言霊」という見出しから、ただ者ならぬ気配を醸し出しております。そこで各編のお気に入りを少し。

前編「彼岸花」より

鱗雲鱗となって落ちてくる感覚のして君は火ですか

鱗雲は地震の予兆とも言われます。そこに「火」という言葉が入る事でさらに恐怖を感じずにはおれないのですが、私は女性により自らが恋に魂を揺さぶられ、燃え上がってしまうロマンチックな歌だと読みました。

中編「罠」より

埃まみれの油まみれの換気扇 生きてゆくって執着かもね 

日常に満ちた、いや寧ろ疲れた換気扇、そこに生きる意味を重ねております。これは筆者様の鋭敏な感性が、この時空の中で独自の帰結に至る傑作かと思われます。

後編「言霊」より

螺旋なる蒼い光と螺旋なる紅い光が重なってゆく

アンソロジー最後となる首です。一見この首を空気感のみで読まれる方も多いかと思いますが、私は生と死の交わりを詠まれていると感じました。生も死も螺旋なる運動の中で重なり合う、それが人間です。一般的にそれぞれを対極として考えますが、生は死を内在し、死は生を内在する、その様な死生観の余韻から宇宙までを私は感じました。

あっ、少しと言いつつ、思いっきり書いてしまいました(笑)。

お勧め致します。

短歌という詩型、秋をテーマに世界と日常を繋ぐ素晴らしい作品の数々に、スタンディングオベーションで感嘆と称賛を!

皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)