異星のアルテミス
虚数遺伝子
384400キロ先の処刑場
384400キロ先の処刑場
少年は走る。
荷物を抱えながら必死に草原を走る。
「クソ、ここの地はなんて走りにくいんだ!」と文句を垂らしながら、振り返って追手を見る。
後ろ――数百メートル程の距離で、大量の人型機械が‶排除、排除〟と鳴きながら彼を迫ってくる。
なんだか知らないのだが、反射的に逃げてきたのだ。例え身体を鍛えたとしてもギンギンと照らす太陽の下では、体力は奪われていく一方だ。
月面都市であれば芝の生える区画でもこんな凸凹な地面じゃなかった。これが未知の地‶
「あ」
背後に気を取られて平地かと思っていた凸面に盛大に転んでしまう。咄嗟に片手が握っている長柄の機械を地面に刺して、これ以上の醜態を晒さなくて済んだ。
「クソッ……。おい、ライフルモード起動だ!」と少年は機械に向けて吠えた。
『使用者:ティール・トルノルフェ、
「ポンコツがッ」
蒼い星に着いてから三時間目。ここは月面都市と違い、人類を太陽から護るドーム型のガラスがないからか、皮膚が焼かれているようで苦しい。更に一時間前に大群のロボットがどこから現れて攻撃してくる。
何故こうなったのか。
ティールは思い出す。
最後の人類は月を最後の砦として生き延び千年を迎えた。そして生き残った人類を守るという正義を掲げた、宇宙進出を禁ずる‶宇宙法〟が制定された。
宇宙法の極刑と言えば、伝統的な死刑という名称だ。
だが、死刑を受けた人々はどうなっていたか、知る人が存在しない。
ティールも知らなかった。
彼も一人、数年に一人と言われる死刑囚だ。決して名誉的な称号ではないが、彼は疑問を持っていた。何せ彼は、ただ宇宙に興味を持った一人として、死刑宣告を受けたのである。納得するわけがない。
蒼い星が処刑場なことはもう意味が分からないのに、バカみたいにコストを食いそうな量のロボットに加え、今まで見たことのない先端技術の武器を与えられた――と思えば
せいぜい足掻いて死ね、という政府からのメッセージなのか? わざわざ高コストのロケットまで使って?
「バカだろ」
思わず口に出してしまう。走っていて少しでも体力を温存したいこの時に。
冷静に考えたら目前の問題はロボット敵だ。明らかに彼を探知して自動的に攻撃をかけてきた。もう人類がいないはずのこの星に、何故人工物のロボットがいるのか?
あれこれ考えると五分が経ったと感じる。
「おい、ポンコツ、さっさとブレイドモードを起動しろ」
『使用者:ティール・トルノルフェ、
「当たり前だろッ! もうこんなに近くにいるぞ!」
呑気な機械だ。武器としてのシステム、もはや製作者からの嫌がらせでしかない。オシャレなところ以外誉める点がない。
『承知いたしました。ブレイドモード起動』
ライフルのような黒光りする武器が真ん中に上から柄まで割れて、中からファンタジー世界にありそうな、ライフルモードに劣らない長さのブレイドを持つ剣が露見する。
『ブレイドモード起動完了。敵数、351。最短距離、63メートル、接近中』
目で見れば分かる。機械が喋っている間も大軍が埃を上げて迫ってくる。
ティールの使い慣れた武器は
ああ、もしポンコツにミサイルモードがあれば楽だった。
そう思っても仕方がない、と彼は剣を構える。
「敵の弱点は?」
『分析中……。分析中……。分析中……』
「聞いた俺がバカだったわ」
一対多の乱闘を経験したことなくはない。ただし今までの相手は人間だった。ロボットに関節がなく痛みを感じないと仮定したら、今までの戦い方は通用しない。
まずは敵の動きを観察してみよう。
最初に彼を見つかった時から、暫く鬼ごっこをしてきたが撒けなかった。つまり探知機能でターゲットをロックオンしたら、自動的に追従する指令だと考えられる。人間であれば予測するのは難しくない。
やっぱり不可解なのは、一体誰がなんのためにこれだけのロボットを作ったのか。千年も経ったはずなのに、人類が作ったわけでも、ロボットの自己進化でもありえない。性能が月面都市の旧型ロボットよりも遥かに劣っているからだ。
「ははは、はいじょ、はいじょ」
なんてバグを食らったような言葉しか発せないロボットが、現代人類文明を越えようとした技術進化の成れの果てだなんて、死刑を受けるよりも人類に絶望させる現実だ。
何かが横切る瞬間、ティールは剣をほぼ反射的に振るう。すると彼を捕まえようとする一機の
ここまでは予想通りだ。と彼は考えながら剣を振り続ける。腕、胴体、太ももを斬り続ける。今までの戦いなら、一本でも吹き飛んだら人は戦意を失うはずだが。
足を失って転がっていても彼に飛びかかろうとするロボットを、周りを巻き込むような、大きな一振りで首を斬り落とす。意外と人間のように、頭部を分断されると動きが止まるようだ。
とはいえ、人間の背丈を持つロボット達の首を狙い続けるのも容易ではない。
「ミサイルがあればな……」
彼がそう呟くと、ドカーン、と爆発音が遠くない場所から聞こえる。爆風に頬を打たれて、爆発が実際に起きたと身体をもって認識した。
人間がいないはずの、この地で。
爆発の方向に顔を向けてみると、爆発に巻き込まれた吹き飛ばされた機械の首や部品が流れ星のように降ってくる。
突然に、煙の中から影が動いた――あれは人間だ。白に近い水色の長髪を持つ少女に見える。見れば見るほど、彼女はこちらに向かっているようにしか見えない。
「邪魔」
「あ?」
思わず切り返したが、彼以外の人間がいることと、彼女の動きが異常なことに、苛立ちも吹き飛ばされた。姿を見せた以降、彼女は一度たりとも地面に落ちていない――ロボット達を、動いているのも動いていないのも下敷きにして、その上を踏んできた。
よく見れば、彼女が履いているブーツの下から刃物がはみ出している。初対面の無礼を忘れそうなくらいに、かっこいいと思ってしまった。
彼が賛嘆しようとした瞬間に生存本能のアラームが鳴いて、身体を低くして攻撃を躱す。その攻撃はロボットではなく、ロボットを潰している少女のものだ。
防御をする様子もなく、ただひたすら全身に仕込んだ武器を振り回す。
「おい、無茶だ! くっ」
彼女に構う時間がない。彼女の登場で部分のロボットは彼女にターゲット変更したようだが、周りにいる数が減っていると思えない。
ふと何かが直撃してくるようなものに反応して、咄嗟に防御する姿勢を取るものの、相手より遅れて後ろへ後退してしまう。間違いなく少女が蹴ってきた。刃物のない箇所で蹴ったのだが、攻撃であることに変わりはない。そして彼女は人間だ。人間であれば対処しようがある。
むかむかするが、次の瞬間、ドカーン、ともっと近距離で爆発が起きた。
「は……い……じ……」
爆発に背を向けて、こちらに向かってくる少女。彼女が美少女かもしれないし、永遠に続くようなロボットの攻撃を一気に終わらせたが、むかむかする。
「お前、どこから来たのか分からないが、礼儀を教わらなかったか?」
少女は答えずに彼を見て視線を落とす。すると苦虫を嚙み潰したような顔になって、片手で敬礼をする。
「……シェーナ・デルゲン准尉であります。両親は九年前に殺されました。少尉」
「なんなんだ?」
言葉は通じている。だが先程の彼女と全く違う人に見える態度はなんなのだ。
そういえば、ちらっと胸元を見たような、とティールは気付いて自分の胸を見てみる。すると、いつの間にか着せられた服の上に、点と星で綴る記号があった。
‶いつの間に〟と言うのはこの地に着いた前のことだ。
処刑日にある乗り物に乗せられた後、注射で眠らされた。次に意識がある時は、もう蒼い星に着いたのだ。服装も荷物も新しく用意されたものだ。
さて、少女、シェーナ・デルゲンのリアクションを見るに、この記号が‶階級〟を表現しているようだ。一つの星に二つの点を彼女は少尉と呼んでいた。
いや、おかしいだろ。
「いや、おかしいだろ」
思ったことをそのまま口にしてしまう。だっておかしいだろ。
「何がでしょうか?」
「ここは処刑場じゃないのか? この階級になんの意味がある。そして君は誰だ……どこから来たんだ?」
「‶蒼き星行き〟……、宇宙法を犯して死刑を言い渡された人達は自分たちのことをこう呼んでいます。私も少し前に死刑を執行されると言われてここに送られました」
「他にもいるのか?」
「えぇ」
死刑と言えば、すぐに受刑者を死なすのが特徴だ。だが彼以外にも送り込まれて、生きている人間がいるということは、単なる‶死刑〟ではないようだ。
「何人いるんだ?」
「……四人です」
四人だけなのに彼女が時間をかけて考えたのはなんだったのだろうか。
「何故生きてるんだ? 死刑だろ? 俺達」
「死んでます。おそらくあちらでは私達は死んだ扱いでしょう。私達はここで毎日、担当から連絡を入れて、カラクリと戦うだけです」
担当、とティールは頷いた。彼にもそう名乗る男がいた。男は彼の死刑が決まったからずっと付き添っていたが、この世界については何も教えていない。定期連絡するとしか伝えなかった。
そもそも頼っていないが、とティールは思い出しながら腕に付けられた通信用の腕輪をちらっと睨んだ。
「戦う……、ってことは死んだ人もいるのか?」
「ええ」
彼女は淡々と答えた。まるで他人の死はどうでもいいみたいだ。
彼女の目は濁っている。俗に言う‶死んだ目〟だ。
「……だが生きている人もいるってことは、拠点的なところもあるだろ?」
「ええ」
返事も簡潔で無関心。拠点があるとしたら他人とのコミュニケーションはどうしてるんだ、と思わざるを得なくなった。
「なら、拠点まで案内してくれ。こいつら……、人型ロボットのことも聞きたい」
「了解しました」
シェーナはロボットのことを語ってくれた。
どうやら毎日は‶軌道〟にいる担当達がロボット軍の動きを予測して、指令を下すらしい。
ロボット達は人間を見つけるとすぐ無差別で攻撃する。ティールの予想通り、頭部を壊されるまでロックオンした人間を自動的に追い、攻撃し続ける。
そして彼女の話で得た情報で最も気になったのは、誰もロボットはどこから来たのかを知らない。
ロボットの動きを予測するのに、どこから湧いたのかも分からないのは頭を傾げる。
担当と名乗った人達は味方じゃないのは確定だろう。
「デルゲンは一人で来たのか?」
「ええ」
彼女は質問にイエスオアノーしか答えない。敵ロボットと話した方がまだ返事のバリエーションがあった。拠点まで何キロもする距離で、このぎこちない空気を耐えなきゃいけないのは勘弁だ。
「そうだ。他にどんなやつがいるのか、教えてくれよ」
「……わかりません」
「いや仲間だろ」
「仲間じゃありません。みんなは死ぬのを待ってるだけです。互いのことを知らない、探らない、そういうルールなので」
「同じ夢を抱いた同士で、勝手に絶望してるってことか?」
彼女は彼に顔を上げる。怒られるのかと思いきや、彼女の表情に変わりはなく、感情なく彼を見つめる。
「宇宙法を犯した人はそうでしょうが、私は違います。人を殺したので蒼き星行きになりました」
「……ん? 通常の死刑の人間もここに送ったのか?」
「さあ。そもそもここのことは知られてないし、他の人のことも知りませんので。どうせ死にます」
「そんな……」
ティールは反論しようとする。
「はい、じょ」
「え?」
振り返るとそこに一機。
「はいじょ」
「はいじょはいじょ」
「はいじ、はいじょ」
「仲間を呼べる虫か! デルゲン、お前はさっきの爆弾を」
「ありません」
「え?」
「予定通りの相手に使い切りました。もうありません」
「クソ、逃げるぞ!」
動こうとしないシェーナの腕を咄嗟に掴んで逃げる。何故、この少女は敵を前に、表情を変えず行動を起こさずにいるのだ?
「命令があれば戦いますが」
「この数で二人は無茶だ!」
「逃げるところで追いつかれます。機械は疲れませんから」
「センサーを鈍くするんだ!」
オープンスペースの草原にいるとただの的だ。身を隠せて紛らわす場所があればそれに越したことはない。月面都市で言えばビル群なのだが、人類のいないこの地で同じ条件を持つ場所なんて、ありえるのか?
アイデアが湧いても却下してしまうティール。蒼い星のことは何も知らないのだ。
「遮蔽物があるところ、あるか?」
「森ですね」
「もり? いや、いい。案内してくれ!」
一時的にも凌げる場所があればなんでもいいのだ。これ以上の案を思い付かないだろう。
「了解しました」
直感は唐突に訴えるものだ。シェーナとの短い会話の直後、出所の分からない不安感が湧き上がる。敵の出現のものなのか? 違う。そもそも何かがおかしいのだ。そう、この命令を従う少女のことだ。
シェーナ・デルゲンと名乗った少女は一人でどこから来たのか。彼女に一度ピンチから助けられたから疑いたくはないが、彼女は自分の意思を持たない。もし、誰かの命令で来たなら? もし、誰かの命令で嘘をついたら?
いや。
ティールは頭を振る。
考え出したらキリがない。今は彼女を信じるしかない。
どの方向を走っているのか分からない。太陽に背を向けているとしか分からない。このまま十数分が経つと周囲に背の高い植物が増えていき、樹木の密度が高くなっていく。
「ここは……?」
人類の住みやすいようにデザインされた月面都市で育ち、蒼い星の実態を知らないティールからしたら‶森〟という概念はないのだ。
「ここであれば身を隠せるのでしょう。私は戦うしかないと思いますが」
『敵接近』
思わず、わっと声を上げてしまうティール。機械的な声は彼の武器から発したものだ。
敵を探知できるなら、最初からしてほしいのだが。
『西方向、百七十五機』
「にしィ? どこだ、その西とやらは!」
「蒼い星の方位を指してます。私が対処しますので、少尉はその間に後退を」
「なんだその喋り方は……、いや、そんなことより一人は無茶だ……っておい!」
彼が喋っている間に少女はもう身体を宙に飛ばし、数十メートルまで接近してきた敵への攻撃を開始した。
彼女は着地する前に既に両腕、両足に仕込んだ武器を展開させ、両手にも短刀を握らせる。ただひたすらに、無心で敵を刻む。
「あのバカ……!」
機械のようだ。彼女は誰かを助ける気持ちがない。戦うのも守るためではない。そう、ティールが彼女から感じ取れたものは‶命令〟だけで成り立つ結果ではない。
ただ命を棄てようとしているだけだ。
瞬間に、過去が頭を過ぎる。
月面都市の法廷。
大きく暗い空間で同じように黒い席と、席を分けるように緑色に光る線。被告席を囲む数百に及ぶ人々は彼と、彼の背後にいる裁判官の数人を見つめていて、あの言葉を待つ。
「――被告、ティール・トルノルフェ。宇宙法に基づいて死刑を下す」
と。
裏切られて逮捕された時は既に予想していた。だが現実になるとリアリティに耐え切れない。
死ねばもう約束を果たせない絶望に襲われた。
――もうとっとと死ねばいい。惨めな想いをこれ以上しなくて済む。
「まだ生きられるのに……、この、バカがッ」と彼は武器を握り締める。「おい、ポンコツ、起動しろ!」
『使用者:ティール・トルノルフェ、照合〇。ブレイドモード起動』
長剣へと変形する武器を握って地面を蹴る。彼は一番近くにいるロボットの首を一撃で斬り落とし、倒れる前にその胴体に蹴って、また近くのロボットを踏み台にして視界を広くする。
「デルゲン! どこだ?」
戦う彼女の姿がどこにもいない。それはそうだ。彼女の装備は機動力あるが殺傷力がない。まるで自ら虎穴に飛び込んだ子羊だ。
ブレイドを真下にいるロボットの脳に刺して、重力加速度を相殺し着地する。一人では捌き切れない数の敵が集まってきた。
早く少女を探し出して撤退しないと。
「デルゲン、応答しろ!」
ブレイドを振り回しながら彼女を呼ぶ。彼女がこのカラクリの中に沈むのはまだ早い。
「デル――」
いた。
地面に座り込んだせいですぐ見つからなかったが、虚ろな目で戦いを放棄している。
「バカかッ」と彼は一振りで周囲の敵を払い、できた隙で彼女に追いかける。「立て!」
「パパ、ママ、私を迎えに来たの……?」
「何言ってんだてめえ! 俺は……」
そういや名乗ってなかった。
「通りすがりだ! 逃げるぞバカ!」
「はっ、少尉……、何故ここに……」
「だから逃げ……くっ」
会話の間に敵は待ってくれない。彼女に手を伸ばすと無防備な背中に攻撃が刺さった。反射的に振り返りブレイドで頭部を壊す。
「なに、やってるんですか?」
「だからっ、さっさと立て、逃げるぞ!」
「私のことはほっといて……」
「知らんッ! これは……俺のエゴだ! 立て!」
シェーナは彼を瞠った。誰にも言われたことない言葉が彼女の氷の檻にヒビを入れたようだ。
彼女は言われた通りに立ち上がり、彼と切り拓いた血路を走る。
「これからどうするつもりですか?」
「……わかる……、こいつらを倒す方法を……。とりあえず進め、もっと奥へ……」
ティールの息が荒い。よく見れば、どくんどくんと脇腹から血が出ている。この出血量では逃げ切れることはできないのだろう。
「担います」
「いや……」と彼はすん、と空気を吸う。「もう、近い。土も、濡れている。水源が近い」
「水源……? 何するんですか?」
「
彼は痛みを和らげるように深呼吸をする。ブレイドモードの武器をそのまま、杖代わりにしている。
「だからこれからは、お前が、あいつらを水場まで連れていけ」
「少尉は……?」
「ここで時間を稼ぐ」
「何言ってるんですか? 死にますよ?」
「このまま二人で行ったら共倒れだッ! お前の仕込んだ刃で泥沼を越えるのが速い。だから水源を見つけて、こいつらを誘導するんだ」
「しかし……」
「もたもたするな」
一気に喋ったのか、彼は苦しそうに片手で腹部を抑える。
そんな彼を見て、シェーナはアウターを脱いで彼の傷口を縛る。
「分かりました……方位さえ分かればすぐに戻ってきます」
「ああ、それでいい」
彼女は足の刃を伸ばし泥に立ち、彼に振り返る。
「死なないでください」
「ああ」
彼女を見送る方向の反対側から、はいじょと鳴きながら近付いてくるロボット群。
「おもちゃとちょっと遊んでやるか」と彼はふうと息を吐く。「ポンコツ、ライフルモードチェンジだ」
柄から黒いブロックが染め上がるように伸びブライドを覆い尽くす。ガチッと軽い音がすると変形完了。
拳銃よりは慣れないが、火力と射程が上という理由で採用。弾丸は実弾ではなく、チャージした太陽光電池を電磁に変換させレールガンとして運用する仕組みだ。実弾と比べたら反動で身体に帰ってくるダメージもないのだが、ティールにとってはどうでもいいことだ。
もう既に満身創痍なのだから。
「……
樹木に身体を寄り掛かって、まだ十数メートル外にいるロボット達を撃ちまくる。
『敵129。ライフルモード維持可能時間推測一分二十三秒』
「あいつらがそれまでに登ってくるからよ」
「ポンコツ、次ブレイドモードにしろ」
推測より短い時間で撃ち終わったライフルモードを片手に投げる間にブレイドモードへ変形完了。ティールはそれを握って敵に身体を投げて、ただ無心に首を狩って狩って狩りまくる。一秒すら一時間のように感じ、ただ剣を振って振って振りまくる。
意識がなくなるまで。
異星のアルテミス 虚数遺伝子 @huuhubuki
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