自然の定義1

 窓の外の雨は強く叩きつけ、TVの電波も悪くなる一方だ。ソファに座っていたミズナギは火照った体を投げ出して宙を見つめている。

 体の奥底で力がふつふつ湧いていた。男の体ではどうしても受け取った力を変換することしか出来なかったが、やっとのことで力を生み出すことが出来ている。

 体中を流れる水が波立ち、泡立ち、また静かに水面を広がっていく。

 うまくことが進んでいる。ナツキの思考も今は乱れがない、聞こえはしないが……。レイモンドの心境を考えれば複雑だが、今は戻すことに注力しないといけない。

 というのも、空を走る光の竜の多さが気になっていた。水の神は加勢としてそれを送ることがあるが、実質、雷はミズナギ、レイモンドと使う事は可能だ。

 しかし、あれだけ多くなっているとなると何か異変があるということだ。

 地上にいる以上は狩りを終わらせなくてはならない。

 ミズナギは指先を唇に当てる。小さく呪いを唱えて息を吹くと、小さな水の塊を生み出した。水の塊の中の気泡が反応するようにくるんと動く。

「見ておいで」

 つうっと水は空気中に線を描くとドアの向こうへ消えて行った。

 入れ違いにドアが開き、上半身裸のレイモンドが入ってくる。美しい肉体には上気し肌艶は良く、ただ立っているだけでも見惚れるほどだった。

「……戻ったか?」

「はい、ミズナギ様も……お戻りになられましたね」

 ソファに座るミズナギを覆うようにしてレイモンドは近づいた。優しく唇を合わせて息を吐く。

「嫌な思いをさせてしまいましたね」

「いや……ナツキはどうしている?」

「今眠っています。後ほど水につける必要はありますが……」

「そうか」

 レイモンドは膝をつきミズナギを抱き寄せた。

「……私を許してください」

「気に病むな、それに侘びなければならないのは我だ。お前を使い、ナツキを抱かせた。ナツキにも詫びねばならん」

「……そんな」

 レイモンドの瞳が揺れている。ミズナギへの想いに嘘はないだろう、そしてナツキにも惹かれている。嘘はつけない男だ。

「だから早く終わらせよう。ナツキのためにも」

「はい」

「それから……」

 窓の外に視線を向けた。叩きつける雨がやかましく響いている。

「どうにもきな臭い。神からは鬼のゲームについては聞いておる。しかし神が加勢するといっても、ああまでは酷くない」

 ピシャンと大きな音が鳴り、窓の外が光ると部屋の中の電気が消えた。そしてカチカチとまた電灯が点る。

「……確かに……まるで人を出さないようにしている。私たちも狩りの最中はそのようにしますが、今まさにそれだというほどに激しい」

「今降りている使徒はお前だけか?」

「はい。私だけになります。他の使徒も名乗りを上げましたが……その 」

 口ごもるレイモンドを促すと渋々続けた。

「ミズナギ様を探すのにうってつけだと……思ったのです。ですが……それが裏目に出たのでしょうか?」

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