握手。
いや、この手の文化的背景をどれだけ事細かに描くことができるかどうかって、めっちゃくちゃポイント高い要素なんですよ!
物語の基本設定とも呼べる場所で、詳細に説明するとめんどくさくて端折られている点や、ご都合主義でごまかされている謎というのは、めっちゃくちゃたくさんあるわけです。
冷静に考えて、隣の国ですら使用言語が違う――下手したら同じ国でも地域によっては言葉が通じなかったりするというのに、ファンタジーの異世界がすべて同じ言語で統一されているわけがないんですよ!
しかも、人間以外の特殊な生態を持つ異種族まで存在するわけですから、その文化に根差した「種族言語」とでも呼べるものも当然考えられるわけで……うん、言語が一つだけなんて絶対足りないし、あり得ない!
また、ところが変われば気候や地質も変わり、気候や地質が変わればそこでの生活様式や栽培に適した農作物も変わり、となれば食文化も大きく変わってきます。
小麦が主食の場合もあるでしょうし、米の場合や蕎麦の場合、とうもろこしの場合だって考えられます。
どこでも白いふわふわのパンが食えると思うなよ!
言語や食文化だけでも設定の組み上げは膨大なものになるのに、そこから更に国家の政治体制やその歴史、宗教関係なんかも作っていったら……うん、こりゃあ永遠に作品本編に着手できそうにありませんね。
でも、この手の「設定の塊」みたいなものが好きな層というのは確実にいるわけです。
決してカクヨムのライトユーザー層でもてはやされるタイプの内容ではないのは確実ですが、「細部に神は宿る」の言葉通り、細やかなところに異文化の作り込みが見える作品には、確かなファンが存在し、そして彼らはそういう部分を評価します。
プロット部分でその手の設定をガッチガチに固めた上で、なおかつ一般的な異世界ファンタジーのような入り方をしつつ、少しずつその文化的な背景を描写していくことができたならば……それこそ、トールキン作品のような超大作が生まれるかもしれません。
設定にこだわりがあったり、「異世界もののお約束」に違和感を感じる方、是非とも本作をお目通しいただき、共感してみてください。