第03話 暦の始まりは、祭りの始まりである

[newpage]#01 縄文の暦は、水位変化と季節変化

 縄文期に年間の収穫が記憶されていた。

 冬の終焉に、梅の花が咲き、春の訪れに、桜が咲く。

 暑くなって、夏となり、秋となって様々な収穫が始まって、雪が降って冬となる。季節に合わせて、祭祀が行われるのは、季節を覚えるためであり、様々な周期を確認するための手法となる。

 春に鮎が遡上し、冬に鮭が遡上する。

 春に桜が咲いて、杉菜のつくしを収穫し、山菜を集めていく。

 秋には、粟、稗、黍に、栗や栃といった堅果類を収穫し、保存食の加工を始めていく。

 冬には葦を狩って、家の修理を始めて、冬に備える。

 里山を見れば、雪が解ければ野焼きを始めて、雪解け水で水かさが増えた淡海乃海で、葦原が形成されていく。一万年前より人の住む、葦原の中ツ国は、琵琶湖淡海乃海に広がる風景を描き、記憶したモノなのだろう。葦原に住まう、鯉を収穫するのも、葦原中ツ国である。


 日ノ本の場合、雪解け水が、湖水の水位を上昇させて、徐々に水位が下がり、梅雨から台風に秋雨と、雨水で幾度も増減を繰り返しながら、冬に向かって水位が下がっていく。

 淡海乃海を含めた、日ノ本の河川や湖水では、水位変化が季節変化と重なっている。奈良盆地は、雪解け水による、河川の氾濫が多く、盆地の低地では、毎年湖のような風景が、広がっていたと言われている。


[newpage]#02 暦を刻むために、天体を観測する

 <暦とは、季節に合わせて、刻まれるモノである>

 祭りとは、田植えや収穫に合わせて、祭祀を行って、五穀豊穣を願うことにある。


 二至二分、春分、夏至、秋分、冬至

 春分から夏至を経て、秋分に至るまでが、約186日

 秋分から冬至を経て、春分に至るまでが、約179日


 一年の始まりは、北半球世界では、冬至を起点にしていることが多い。 太陽の高さから、確認しやすいというのが理由であり、北半球のどこに行っても、同じ条件で判定することができる。

 星々は、北極星の周囲を、反時計周りで回転して、一日で一周する。つまり、北極星の周囲を巡る星が、直角に回転すれば、6時間経過することになる。夜間の星が、回転するのを観察すれば、星の動きで、時間経過を測ることができる。

 南半球では、季節が北半球と逆に運行し、冬至と夏至が逆になる。北半球の冬至は、南半球では夏至であり、北半球の夏至は、南半球の冬至となる。

 南半球の巡りも同じで、南天を巡る星は、時計回りに回転して、一日で一周する。夜間の星が回転する角度で、時間経過を測れるのは変らない。


 季節や暦は、日ノ本では、各地域の神社で、観測して刻まれていた。つまり祭祀の仕事とは、収穫時期を判断する、重要な仕事であった。


[newpage]#03 神社の始まりは、祖霊の祭祀となります

 神社は、地元や地域の記憶を継承する、大きな流れということになります。

 神社の始まりは、血族信仰の祭祀であり、地域の姓を代表する祭祀が、象徴して神社の氏神氏子を形成していきます。


 安土に沙沙貴神社があり、日本中の佐々木氏、始祖の神社となります。

 宇多天皇第八皇子敦実親王の流れ、宇多源氏、源成頼の孫、佐々木経方を家祖とする一族が、佐々木姓の始まりとなります。日本の佐々木を姓とされる方は、一度は、出かけて見られてはいかがでしょうか。

 大阪渡辺に、坐摩神社も同じで、嵯峨天皇の子孫である、嵯峨源氏源融流れ、渡辺綱を家祖とする一族が、坐摩神社の始まりとなるそうです。日本中の様々な渡辺、渡部、渡邊といった、渡辺氏の祖先が、祭祀となるのが、坐摩神社ということになります。


 伊勢神宮が、主上おかみの祖霊を祀る神社であり、日ノ本では、源平藤橘と呼ばれるかばねが、大きな勢力圏となります。祖霊信仰が、縄文期より連なる、日本の基本的な信仰形態だからです。


 日本にキリスト教が浸透しなかった、最大の理由は、キリスト教が個人信仰であったことにあります。キリスト教における神との契約は、本人を対象とした契約であり、信仰ということにあります。

「俺が尊敬する、父母、祖父母曾祖父母といった、代々の祖霊を救えない神は、神ではない」

これが、キリスト教に対する、日本人の解答となります。

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