第3話
翌日、授業が再開した。
とは言っても、その殆どが学年レクだの卒業式の準備だのに費やされている。(数学の先生だけ時間をもらって高校の範囲をやっているが、大丈夫なのかあの人?)
もちろん、高校に落ちたことは心に深い傷を着けた。合格最低点は340と言われていたので、どれだけ下振れても落ちはしないだろうと、自分も、周りの大人たちも考えていた。その事実……いや、慢心が更に傷を深くした。
卒業式の練習も終わり放課後になって、私は後ろの席のクラスメイトに呼び止められた。
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「それで……私に何の用事でしょうか?」
クラスメイトが全員帰ったあと、教室に二人だけ残る。席は近くなったがそれは偶然のめぐり合わせであり、別にお互いに親しいわけではない。それなのにわざわざ呼び止めたのだ、きっと何か重大な相談ごとがあるのだろう。
「……ご、ごめんなさい!!!」
目の前の同級生は唐突に私に頭を下げる。
「高校受験日に風邪を引いていたと伺いました。実は私、その日の少し前まで風邪引いてて……でも先生たちの授業が受けたくて無理して学校に来ていました……き、きっと。私が移してしまったんです!周りのことも考えられず……本当にごめんなさい!!!」
目の前の女は再び頭を下げる。何を言っているのでしょうか?
残念なことに、私の耳は少しずつ彼女の言葉を処理して、私に届けてゆく。
……こいつのせいで私の人生が崩されたのか?
……
……
………
違う、私の人生で私に起こる災難は私の責任だ。他責思考などもってのほかだ。
「大丈夫ですよ、私は別に気にしていません。試験自体は万全を期して臨めましたし、落ちてしまったのは私の学……運が悪かっただけですから」
出来るだけの笑みを作って。生まれてはいけない憎悪を押し殺して。私は彼女の謝罪を受け入れた。
「そう?ありがとうね~」
そう残して彼女は去っていった。本人に許しをもらったから肩の荷が落ちたとでも言うのか?彼女のあからさまな態度の変化に豆鉄砲を食らっているうちに女は帰っていった。
別に彼女は悪くない。そう分かっていてもこの心の苦しさのはけ口として、都合のいい人間を見つけてしまったのだ。どうしても”それ”に思考が
私はどうすればよかったのだろうか。どうすればよい結果になったのだろうか。誰もいない教室で独り反省をする。
……数秒思考して、一つの答えを導き出す。
そうか、私が馬鹿正直に授業に出たのが悪かったのか。
でも、なぜ正しい行いだったはずなのに、私は損をしているのだろうか?その答えはいくら考えても『不条理だ』以外思い浮かばなかった。
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