05:愚者の船
追ってくるのは軍払い下げの古い亜光速宇宙船で、なかなかよく手入れされているらしくぴたりとつけてくる。それでも貨物輸送船である以上、宇宙制限速以上は出せないはずだ。
だが俺達のような『資源ビジネス』には航宙交通法など関係がない、と船長のヨーは言い切ってやってきた。俺達は捕まらず、
何しろこの船には魔女が――
「船長、
熱や光を放つ輪のような
「ギリギリに寄せて
「百三十秒!」
「カウントしてろ」
いつもこうやって逃げ切ってきた。楽勝だ、とヨーは考え、隣の席に座る魔女を見やった。
辺境の惑星で偶然拾った魔女だ。動けなくなっていたので助けてやった。『主従の契約』というやつをやったからヨーの言うことは全部聞く。
だが不可能なこともある。たとえばこの船ごと
まあ、それはそれ。荷を積んでいない軽い船なら逃げ方なんぞいくらでもあるのだし、『結界』とかいう次元干渉防御フィールドも張ってくれているらしい。それに抱き心地が最高だしな、とヨーは鷹揚に魔女の不出来を認めている。
「次の港で甘いものでも買ってやる。それまでいい子にしてろ」
「七歳くらいの子どもがいいわ。あのくらいの肉が一番柔らかくて甘、」
言葉が途切れて魔女が突然痙攣を始めた。座席の上で感電でもしたようにびくんびくんと身体ごと大きく跳ねる。その目は見開かれ顔は恐怖に歪み、口からは悲鳴じみた声が放たれた。
ほとんど同時に
「ありゃ何だ、報告しろ!」
そう叫んだヨーに信じられない答えが返ってきた。
「船長、ブラックホールが二つある! 何でだ、さっきまで何もなかった」
ブラックホール? あの光は
船に断続的な衝撃が続く。外装モニタにコンマ数秒間映し出された光景を見てヨーは我が目を疑った。
つい一昨日、海水を盗んだ
その後はどのモニタも光しか映さず順に焼き切れ、船内は警報音に満ち、あらゆる機器が破裂するように故障していく。
魔女が叫ぶ。
「星が
映像が途切れる寸前、モニタが示した重力値からヨーは空恐ろしい事態に気づいた。数値は、それこそ一昨日見たばかりの恒星系全体とほぼ等しい重量の何かが突如出現したことを示している。サディスティックな趣味で資源ビジネスをしているヨーは、殺した相手から記念品を取るかのように『採取』前後の恒星系の重量を記録して比べる習慣があった。
その数値を、桁を見間違うはずはない。
つまりこれは。
誰か強力な
現れた物質はブラックホールの重力に引かれて加速、高温となり、光や高エネルギー放射線を発し始める。既に
恒星が直接
ブラックホールは、急激に質量を増し。
質量と比例して半径が増加する『終わりの境界』が、
光すら二度と外に帰すことのない
拡大する。
その時、ギリギリを攻めて
反転しろ、そう叫ぼうとしてヨーは、もう遅すぎることも分かっていたし、自分の命が残り一秒もないだろうことを知った。
ただ、これほどの物質量を操る
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