第6話 犯人探し

スキルを奪われたレオンは、表向きは平然を装っていた。だが内心は、煮え立つような屈辱と恐怖に囚われていた。


貴族の嫡男である自分から、能力を盗むなど――前代未聞だ。もし噂になれば一族の恥。だからこそ、父にも大っぴらには言えない。


そこで彼は、また魔術師を密かに呼びつけた。


「犯人を探せ。……だが絶対に、他の者には気取られるな。」


「御意。とりあえず、屋敷の者から順に鑑定を行いましょう。」


老魔術師は低く答え、その日から屋敷の者たちにこっそり鑑定魔法をかけ始めた。


ユウトはそんな動きを知る由もなかった。


毎日のように皿を運び、床を磨き、薪を割る。


だが胸の奥には【身体強化・初級】が確かに息づいていて、密かに夜な夜なその力を試すのが小さな楽しみになっていた。


ある昼下がり。廊下を掃き掃除していると、不意に空気がひやりと冷たくなった。


次の瞬間――。


《鑑定魔法を受けました。ステータスをどのように偽装しますか?》


目の前に透明なボードが浮かび、ユウトの心臓が跳ね上がった。


「なっ……!」


反射的に周囲を見回すと、廊下の端に老魔術師が立っている。目を閉じ、杖を掲げ、こちらに意識を向けていた。


――やばい。


汗が背筋を伝う。


もし【怪盗】や【身体強化・初級】の存在が見抜かれたら……。即刻処刑だ。


だがボードは冷静に続ける。


《選択してください:①完全な奴隷ステータス(スキルなし/ギフトなし) ②一部改変(能力値を調整可)》


ユウトは迷わず①を選んだ。

同時に、念じた。


「……何も持たない、ただの奴隷に見せてくれ…」


ボードの文字が淡く光り、すぐに霧散した。


魔術師の瞼が開く。

険しい顔でしばしこちらを見つめた後、ふんと鼻を鳴らして立ち去っていった。


ユウトは箒を持つ手が震えているのを必死に抑えながら、平然と掃除を続けた。


――危なかった。


あれが「鑑定」か。つまり、レオンは本気で犯人を探している。


その夜、物置小屋でひとり膝を抱え、ユウトは深く考え込んだ。


ギフト【怪盗】はただ盗むだけじゃない。ステータスを偽装し、敵の目を欺くこともできる。


これは単純な機能じゃない。……「盗み」を成功させるために様々な機能が組み合わされた能力なのだ。


「なら、まだやれる。」


口元に笑みが浮かんだ。


無力な奴隷の皮を被りながら、内面には力とギフトを秘めている。


領主の息子レオンがいくら必死に探しても、決して辿り着けないくらい狡猾に立ち回ろう。

――まさに怪盗だ。


翌朝。

いつも通りに食堂で皿を並べる周囲の人間の姿を、レオンは遠巻きに睨みつけていた。


だがその眼差しに気付く様子もなく、ユウトはただ従順な奴隷として立ち働いている。


まるで「何も知らない」かのように。

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