診察室にいた声

さかもと

診療記録(第1回)

診察日:2025年4月11日(金)

担当医:高城 祐一(精神科医)


患者番号:#44216

氏名:瀬戸 和樹

性別:男性

年齢:48歳


主訴:「眠れない」「物音が気になる」


経過:

本人の訴えによると、3月上旬より入眠困難が顕著になり、眠れない日が連続している。仕事は現在休職中。特に夜間、部屋の外から聞こえる「音」が気になり、眠気が訪れても警戒感で目が冴えてしまうとのこと。耳鳴りや幻聴といった症状ではなく、「何かがいるような音がする」と曖昧な表現。


精神状態所見:

意識清明。受け答えはやや間を置くが一貫しており、会話成立。被害妄想や幻覚所見は今のところ認められない。

診察室内では終始落ち着かず、椅子に深く座らず姿勢が浅い。しばしば背後を気にする仕草があり、質問の最中に天井を見上げる動作が一度見られた。


診断(暫定):

神経症性不眠(F51.0)

現時点では精神病性エピソードなし。


治療方針:

短期的な睡眠導入補助として、ゾルピデム5mgを7日分処方。睡眠日誌の記録を指示し、経過観察とする。必要に応じ、次回より抗不安薬も視野に。


診察記録:

初診。患者は終始小声で話すが、内容は明瞭。自身の症状を「眠れない」「神経が張っている感じ」と表現。

問診の終盤、突然、「先生、この部屋、音しますよね」と発言。

内容を確認したが、特に物音は認められず。

「ずっと、カチカチって……秒針じゃない、もっと柔らかい音です」

しばらく沈黙ののち、「気のせいなら、それでいいんですけど」と笑った。

診察終了後、ドアに手をかける際に一度振り返ったが、特段の発言はなし。

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