第15話 お出かけ!(1)
梅雨も明け、日差しの強く明るい日が続く。
7月上旬のある日、陽菜乃は凛、円香と共に、息抜きに
プライベートで3人で出かけるのは初めてのことだった。
駅からバスに乗って最初の目的地である川越氷川神社に行くことになっていたのだが、待ち合わせ場所の川越駅にはまだ陽菜乃しか到着していなかった。
陽菜乃はスマホの画面に目を落とす。待ち合わせ時間の9時30分まであと10分。
「お待たせしました〜」
スカートをひらひらさせながら小走りで改札から出てくる円香は、白のフリルブラウスに黒のロングスカート、サンダルといったエレガントなコーデ。ヘアアレンジもいつもと違い、サイドの毛を編み込みスタイルにして、毛先は緩く巻かれていた。
学校で会うときとは違うその姿を目にして、陽菜乃は思わず息を呑む。
「橋本先生、まるでモデルさんみたい」
「えへへ、今日は気合い入れちゃいました!」
円香は自信満々にスカートをひらりとさせてみせる。
円香の私服を見たあとに自分の服を見ると、陽菜乃のTシャツにカーディガン、黒のパンツスタイルといった服装は少し地味だったのではないかと心配になる。
胸の内で小さくため息をついた、そのとき—
「ごめーん、遅れた!」
低めの声とともに、改札から長身の女性が歩いて来た。
白いシャツにベージュのジャケット、ダークカラーのデニム。シンプルながら大人の雰囲気を纏っている。
しかもサングラスまでかけているせいで、少し目立っていた。
「…誰?」
陽菜乃と円香の声が揃って出る。
「私です」
凛は笑いながらサングラスを外した。
「金町先生でしたか…」
陽菜乃と円香は顔を見合わせて笑う。
「そ、そんなにおかしい?」
ふたりの反応に凛は照れくさそうに頭をかいた。
「おかしいっていうか、なんかいつもと違うから…」
陽菜乃の言葉に、凛は2人を見て苦笑いする。
「いや、それを言ったら私だけじゃなくて、久慈先生も橋本先生もでしょ」
3人は思わず見合った。
「まあ確かに。私服で会うのって、初めてですね」
「ほんと。なんか新鮮…」
円香が笑みを浮かべると、陽菜乃もつられて笑った。
学校で過ごすのとは全く違う、少し不思議で、ちょっとだけ胸が高鳴る空気。
「じゃあ今日は、“初めての私服デート”ってことで…」
凛が冗談めかして言うと、陽菜乃と円香は同時に「ちょっと!」と声をあげた。
そんなふうに笑いながら、3人は最初の目的地へ向かうバス停へと歩き出した。
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