第3話 父親がクズすぎる
うっ。
俺は、体の痛みと共に意識を取り戻した。
体の節々が痺れて動けなくなっているようだ。
知ってる天井だ。
ここ、俺の部屋じゃないですか。
また、窓を見ると空には星が浮かんでいるような時間になっていた。
俺って何をしてたんだっけ?
記憶を辿り、何故今部屋にいるのかをよくよく思い出す。
確か兄さんに呼び出されて、魔力を吸い取られて…。
そうそう、元から少ない魔力をさらに吸われたんだった。
でも、魔力吸い取られたのに生きてるのっておかしくない?
普通は、苦痛のあまり自我を保てず廃人になるはずだろ。
でも、自我もしっかり保ったまま生きてるわけだしな。
うん、俺が痛みを苦痛と捉えていなかったことが原因か。
普通は、魔力枯渇の痛みの苦痛に耐えきれず廃人になるそうだしなあ…
ここまでドMでよかったと思ったことは今までないかもしれない。
そこまでは良いとしても、なんで俺は部屋にいるんだ?
一旦、俺は体を起こし部屋の中を見渡してみた。
しかし、使用人一人もこの部屋にはいない。
魔力ゼロの無能とは言え、倒れていたら一人ぐらい付きっきりで看病してほしい。
まあ、いなかったものは仕方がないか。
「はあ、歩き回ってみるか」
俺はベッドから降り、屋敷の中から屋敷の裏までひとまずいってみることにした。
「誰かいないかー?」
部屋を出て、俺は声を出しながら廊下を歩く。
一旦、使用人にでも話を聞いておきたいところだが。
しかしおかしいな。
屋敷の中が異様なほどに静かだ。
俺の部屋は二階にあるので、一階まで降りて広間まで行ってみよう。
◇ ◇ ◇
いつしか小走りになりながらも、階段を降り広間へ辿り着いた。
しかし、着いて驚くことになる。
なんと、誰1人として広間にいなかったのだ。
いくら夜中とはいえ、基本的に広間は誰かしらが見張っていることがほとんどだ。
一体、何が起こっているんだ?
屋敷の裏へ行ってみよう。
そうして俺は、玄関のドアを開け、屋敷裏へと急いだ。
◇ ◇ ◇
俺が屋敷の裏へついたのは、それから5分後のことだった。
そこには、屋敷の使用人たち全員と父がいた。
よしっ!
当たりだ!
「おいお前、あいつはまだ見つからないのか!」
父が使用人に怒鳴っている。
あいつって、まさか兄さんはあのまま家出したの!?
「すみません、マゾヒスト様。ですが、あれだけの魔道具を持ち出したのですから、御子息の無事は安心かと」
怒鳴る父、逃げた兄さん、消えた魔道具。
なるほど、大体の話は読めた。
兄さんが、屋敷にある魔道具全てを持って逃げ出したってことか…。
うん、意味不明だな。
というか、使用人はああいってるけれど、あの父親が子供の心配をするはずがない。
「はあ?俺が心配しているのはそんなクソガキのことじゃないんだよ。魔道具の方に決まってるだろ⁉︎」
やっぱりこの父親は、誰がどうみてもクズだな。
自己中心的なクズだ。
というか、よくよく考えてみると兄さんも被害者なんだよな。
兄さんは、魔力適性が全くなかった人間
だ。
対して俺は、固有魔術の適性を持った人間だ。
固有魔術がどんな魔術かはわからないにしても、希少で強力な魔術という傾向がある。
そのため、兄さんの評価は有能な弟を持つ不出来な兄だったはずだ。
そんな評価だった場合、あのクズ両親なら絶対にイジメ抜く。
兄はそんな中、剣術の腕と身体強化の腕を上げていたということか…
きっと兄さんは俺が魔力ゼロと分かったとき、『報われた』とでも思ったのだろう。
俺に石を投げる気持ちも確かによくわかる。
まあ、殺しに来ていたはずなので、当然許すつもりは毛頭ないが。
場合によっては復讐を考えたっていいほどだ。
いくら苦痛がなかったとて、実の兄から殺されかけることはごめんだ。
「おい、そこに居るのはサンか?」
あ、クズに居場所がバレたみたいだ。
「はい、父上。一体何が起こっているのですか?」
この件は面倒くさそうなので、何も知りませんし、何も分かりませんよアピールだ。
クズは、こちらへ近づいてきた。
「おい。使用人の話によると、お前には魔力を吸い取る魔道具が取り付けられた状態でここに倒れていたそうだが?」
うわー、どう説明しよう。
「はい。実は兄さんに呼び出されて、そのまま魔道具を使用されたのです」
うん。
シンプルis the Best。
それから俺は父に兄とのことと今ここに来
た理由を話した。
魔力枯渇をさせられたこと、何故か生きていて屋敷に誰1人いなかったことだ。
前世の記憶については黙っておいた。
前世では、通勤中にweb小説も嗜んでいたので、転生者だとペラペラ話しても良いことはないと知っているからだ。
まあ、このように話した訳だったのだが…
「………」
あの父は、顰めっ面のままだんまりだ。
うわー、何考えてるか想像もつかないからほんとに怖いな。
「お前、どうして魔力を吸い取られて生きているんだ?」
「わかりません」
うん、変態だからなんて口が裂けてもい言えないですよ。
俺がそう言うと、父はこちらへとジリジリ近づいてきた。
「もう部屋に戻れ」
そう言い残し、父は去っていった。
何故かわからないが、助かって良かった〜!
__________________________
あとがき
明日は2話投稿します!(18時06分と19時06分)
話のテンポを上げてきます!
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