おともだち

蓬葉 yomoginoha

おともだち

 柚花の去った家。

 私は、一人分欠けた部屋のベッドに倒れ込む。

「あう……」

 名古屋の会社に就職した私は、このはじめの三日だけでもうくたびれてしまった。

 明日はお休み。

 きっとこれから、こういう日々なんだろうな。

 仕事へ行って働いて、とぼとぼと家に帰ってきて、お風呂に入ってご飯を食べて、少しの余暇を過ごしたら眠り、早起きをしてまた仕事へ。

 大丈夫かな、私頑張れるかな。しかも柚花ゆかもいないのに。

 プールの息継ぎよりもわずかな呼吸で、生きていけるだろうか。


 

 父も母も仕事、妹の萌和もわもまだ帰ってきていないらしい。新品のスーツの香りを吸い込みながら、ぼんやり窓の外を見てみる。そこで、私の目は、眠気を忘れるほど、見開くこととなる。

だ……」 

 瞳をこすると、それは消えている。

しかし確かに見えた。黄色がうごめいたのが。

 私はしばらく唖然としていたが、すぐに我に返り、スマホを取った。そして、まっさきに柚花のトーク画面を開く。

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