魂の指切り
amagoi
針千本は飲みたくない
01
僕には一つ悩みがある。
公園で子供達が遊んでいる。
「明日も遊ぼう」
「うん、いいよ」
「ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます」
「ゆびきった」
この約束は守られるだろう。なんせ魂も指切りしてる。
子供2人の胸元にある丸い光から手がにゅっと伸びて、ゆびきりげんまんをしている。
あれが魂で僕の悩みの種だ。
02
魂はどんな存在にもある。たまに単独で空を飛んでるが霊感があれば幽霊も見えたのだろうか?
魂が交わした約束は必ず果たされる。逆に言えば口だけの約束は基本的に果たされない。魂は顔より正直で仲良い奴らは親指を上に立てていたりお互い握手をしてるが、仲が悪ければそもそも手が出てなかったり中指立てたり色々だ。
僕は自分の魂も見えるが思ったように動いてくれるわけでもない。だが俺の魂が約束を結ぶことは避けている。必ず守らないといけない約束などごめんだからだ。
この魂が最近活発なのが悩みの種だ。自分の顔をより正直なこいつは世の中に中指を立て始めなんだかロックンロールな生き様を生きようとしている。こいつが最近怒るのは特に争いごとを見る時だ。終わらない戦争を握り拳一つで終わらせようとしてるが。こちらとしてはお笑い種だ。
だから最近はニュースを見るのも避けている。
03
子供達は帰って行った。
さてなぜ僕が公園のベンチに座ってるかの話をしよう。
最近両親の魂同士が喧嘩をしている。何かあったのだろう表面上は何の変化もないからこそ余計に怖い。心は読めなくて良かったか読めた方が良かったか。だから日曜日のベンチに座って暇を潰している。
家では魂武闘大会でも開かれてるのか魂同士が変な光線を出したりしている。正直やめて欲しいが何も言えない。
頭の中を変えたくて魂の性質について思いを馳せる。鳥や空を飛べる虫は風を感じることが多い。空を飛べても土に長く居たであろうカブトムシやセミは土の匂いがする気がする。
そういえばトンボは水の匂いもしたなと虫たちを見ていたら変な女が近づいてきた。
白いワンピース、青い目、白い髪。ヨーロッパからでも来たのだろうかこちらにまっすぐ向かってくる。道案内でもして欲しいのだろうか。視線避けも兼ねてスマホを取り出す。
通知はなしいつも通り。
「私とずっと一緒にいてくれませんか?」
04
目の前にピンク色のほっぺたがあった。予想以上に女が近くに来ていた。不審者かと思い離れようとしたその時。僕の胸から魂の手が恐ろしい早さで伸びた。女の手をとっている。マズいとそう思うよりも先に小指を結んでいる。
もう遅かった。
ゆびきりげんまん
そこまでやって僕は逃げ出した。
「何やってるんだよお前」
初めて魂に対して声が出た。
魂はかなり不服そうだ。でも不服なのはこっちだ。初めての約束を得たいの知れない女としてしまったのだしかも内容が内容だ。しかし相手は生身だったし大丈夫だろうと楽観的に考えることにした。
しかし何が起こるか分かったもんじゃないと帰りたくなかった家に帰る。
魂の武闘大会は少しは沈静化してた。
そして部屋に戻ったら。あの女がいた。
警察に通報をしようとしたが気づいてしまった。女には影がなかった鏡にも映らない。僕が知る限りこの性質を持つものは一つしかない。
女は魂だった。
「逃げるなんてひどいよ」
魂の指切り amagoi @frfr_amagoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魂の指切りの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます