CERES07-AAR-01β 周囲の安全を確保する
マラリは短く息を吐き、隊員たちを見渡した。
「……予定通りです。まずはビル内部と周辺区域の安全を確保しましょう」
全員が無言で頷き、それぞれの持ち場に散開する。
ダースは端末を操作し、外縁部の地形データを呼び出した。
「南側は瓦礫で封鎖、東は狙撃位置に適した高台あり。西は……遮蔽物が少ない」
マラリは頷き、指示を飛ばす。
「トレス、キム──北側の通りを偵察してください。ナカムラとジョンソンは南側を」
呼ばれた4人は短く敬礼し、銃を抱えて瓦礫の陰へ消えていく。
残った部隊は廃ビルの外周に沿って進み、倒壊した壁や隣接する建物の死角を確認していった。
瓦礫の下には古い弾薬箱や焦げ付いた防弾プレートが埋もれており、かつてここで激しい戦闘があったことを物語っている。
カワチはしゃがみ込み、そのプレートを指先で弾く。鈍い音とともに砂埃が舞った。
「……妙に新しい傷だ」
彼の言葉に、マラリはわずかに眉をひそめた。
周囲は長年放置されたように見えるが、武器や弾薬の類いは妙に手入れされている。
誰かがここで戦っている──そう考えるには十分な兆候だった。
その時、離れた廊下の奥から微かな音が響いた。全員が一瞬、動きを止める。
風は吹いていない。自然現象にしては不自然な音だった。
マラリは手を上げて制止の合図を送り、耳を澄ます。だが、次の瞬間には音も途絶え、ただ重い沈黙だけが残った。
カワチが低く吐き出すように息をつき、再び周囲を確認する。
足元の瓦礫の隙間には、薬莢がいくつも転がっていた。
その金属面には、ほんの数日前に付いたような新しい擦り傷が走っている。
油の匂いがかすかに漂い、頭と身体に刺激を入れる。
隊員たちは互いに目配せを交わし、動きを緩めぬまま慎重に警戒範囲を広げていった。
CERES07-AAR-02β 生存者
https://kakuyomu.jp/works/16818792438538808363/episodes/16818792438697143726
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