それでもいつかは春がくる

一澄けい

手紙――はじまりの便り

親愛なる大親友・彩生いろはちゃんへ


きみがこの手紙を読んでいると言うことは、わたしはもう、この世にはいないのでしょうね。

わたしね、もうすぐ死ぬんだって。来年の春までは、生きられないんだって。

きみと一緒に生きたかったけど、だけど、きみと一緒に生きていくことは、できないみたい。

だから、どうしても、わたしが死んだあとのきみに伝えたいことがあって、わたしが死んじゃう前に、きみ宛に手紙を残すことにしました。

さて、わたしが死んだあとのきみは、元気にしていますか。ううん、きっと元気じゃないよね。あんなに大好きだった絵も、きっと描くのを辞めちゃってるのかなって思っています。

当たりかな?だってきみは、わたしのために絵を描いていたところがあったから。だからわたしが死んじゃったら、絵を描くどころか画材にも触ってないんじゃないかって思ったの。

だけどそんなの寂しいから。わたしはきみに、ずっと絵を描いていてほしいから。

だからきみに、きみがもう一度絵を描くための課題を、出すことにしました。

課題ってなんだ、って、きっときみはしかめ面をするんだろうけれど。それは、後でのお楽しみです。

ひとまず、この手紙を読んだなら、まずは喫茶ノースポールへ行ってください。

なんでわざわざそんな面倒なことをするのかって?

だってきみはきっと、わたしが死んじゃったら、学校にも行かずに部屋で引きこもってるんじゃないかって思ったからね。

また当たりかな?だめだよ?たまには外に出て身体を動かさないと、健康に悪いんだから!

まあ、病気で死んだわたしに言われても、説得力なんてないかもしれないけどね。

話が逸れちゃったかな。

とにかく、ちゃんと喫茶ノースポールへ行ってね。課題はそこで伝える手筈になってます。

大変かもだけど、できたら、次の桜が咲くまでには行ってほしいな。

それじゃあ、喫茶ノースポールで待ってるね。


綿貫晴わたぬきはるより

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