7章-第3話
青い仮面の男たちが、瘴気を撒き散らしながら迫る。
かけるは剣を振り抜き、つづるは短剣を舞うように操り、じわじわと包囲を崩していった。
「今だ、中央を抜ける!」
かけるの声と同時に、つづるは地面を蹴って前方へ飛び込む。
つづるの短剣が指揮官の胸を突くが、男は紫光の刃を振り上げ、瘴気を爆発させるように押し返す。
かけるが叫ぶ。
「隙を作るぞ!」
瘴気が地面を這うように広がり、男の傷を再生しようとする。しかしそれより早くかけるが追撃し、剣を斜めに振り下ろした。
鋼の音と共に、青い仮面が真っ二つに割れる。
中から現れたのは、やせ細った男の顔。
皮膚はひび割れ、黒い筋が血管のように走っていた。
「……星核……は……結末を……」
うわ言のように呟くと、男は崩れ落ちた。
かけるが肩で息をしながら、男の懐を探る。
「これ……」
小さな金属の円盤。中央には星を模したような紋章と、不可解な魔法陣が刻まれている。
つづるはそれを受け取り、険しい表情で言った。
「これは……欠片を外部から制御する装置かもしれませんね。ミヤビたちに届けましょう」
二人は急ぎ、戦いの現場を後にした。
ーーーー
延命魔法がつむぐの命を細い糸で繋ぎ止めていた。
後から駆けつけてきたみちるが、つむぐの様子を見て、眉をひそめた。
「欠片の力が暴れている……心臓にまで回ったら、もう延命すら意味をなさないわ。マズイわね」
「つむぐ……」
ミヤビはつむぐの手を握る。
その手が握り返してくれることは無かったが、弱々しい脈が必死にその命を繋ぎとめていることを告げてくれていた。
「……どうしたらいいの……?」
「欠片を制御する特殊な魔法陣があれば、破壊出来るはずよ。あの子たちを待ちましょう」
その時、バンッ、と医務室の扉が勢いよく開いた。
かけるとつづるが駆け込んでくる。
「持ってきたぞ! これが欠片を制御してるかもしれねぇ!」
かけるは金属の円盤を差し出す。
ミヤビはそれを受け取り、つむぐに近づける。
「……魔法陣が欠片と共鳴してる……」
その瞬間、つむぐの体がびくりと大きく跳ねた。
傷口から瘴気が溢れ出し、延命魔法の光が一気にかき消されていく。
「つむぐ……!」
ミヤビは歯を食いしばり、みちると視線を交わす。
「あなたの力なら欠片を破壊出来るはずよ。それ越しに力を使ってみて」
「やってみる……!」
ミヤビは深呼吸し、円盤をつむぐの胸に押し当て、詠唱を開始した。
「——現実を、上書きする……! 欠片の影響を無かったことに……!」
しかし、星核の欠片は凄まじい抵抗を見せ、部屋の空気が軋む。
かけるととうまが駆け寄り、瘴気に押されながら必死に彼女を支える。
ミヤビの詠唱は、星核の欠片が放つ瘴気とぶつかり合い、部屋の空気が震えた。
だが、彼女の魔力は徐々に優勢を取り戻し、円盤の魔法陣が淡く光り始める。
「離れて!」
ミヤビの叫びと共に、かけるととうまが身体を引いた。
一瞬の閃光が走り、瘴気が一気に吸い取られるように引き込まれていった。
つむぐの体からは黒い瘴気が徐々に薄れ、深い傷口の疼きが和らぐ。
呼吸も安定し、痙攣が収まっていく。
かけるが安堵の息をつき、額の汗をぬぐいながら言った。
「間に合ったな……!」
円盤がガラスを砕くような音と共に壊れ、魔法陣の光が一瞬、星の紋様を浮かび上がらせた。だが、それはすぐに消え、部屋に静寂が戻る。
ミヤビはその破片を取り除き、みちるがつむぐの額にそっと手を当てた。
「これで……大丈夫。傷も少しずつ治癒魔法で塞がっていくはずよ」
みちるが笑みを返し、つづるも力強く頷いた。
「まだ油断はできませんが……これで一歩前進だ」
部屋には穏やかな空気が戻ったが、みんなの心には緊張の糸がまだ張っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます