美味しいはずなのに何故

肥後妙子

第1話 もっと飲みたかったなあ……

 今年(初夏頃?)、よく行くコンビニで美味しい飲み物を見つけました。桃フレーバーの甘くない無糖のウーロン茶です。

 私はすっかりそれが気に入ってしまい、コンビニに行くたびに買っていました。ウーロン茶と桃風味って合うんだなあと、ちょっとした感動すら覚えたものです。無糖のお茶だからゼロカロリーだし、材料はシンプルだし、ウーロン茶自体が体に良いらしいし、実際すっきりした後味で私は彼?の事が大好きでした。

 ずっと飲み続けられると思っていたんです。これだけ美味しいのだから、きっと人気商品に違いない!これはコンビニの売上を支える名品だ!と私は信じていました。


 でもある日、彼はいなくなってしまったのです。私はてっきり、きっと人気商品で売り切れなんだ、すぐに補充されるだろうと思っていました。でもその日は来ませんでした。コンビニで取り扱われなくなってしまったのです。

 理由は知る由もないです。生産していた会社や、コンビニで働いている人でない限り分からないのだと思います。知ったところで企業の都合では私にはしょうがないですし。


 今までもこんなことはありました。


 昔、スーパーで売っていたシンプルな材料で造られた甘いカフェオレ、大好きで、良く買っていました。でも、これもいつしかそのお店で扱われなくなりました。店員さんに尋ねたら、意外な言葉が返ってきました。

「ああ、あれねえ、人気あったんですけどねえ、もう置いてないですねえ」

 その時私は、人気商品でも扱われなくなることを初めて知りました。


 更にそれから長い月日が流れ(歳くいました)、カフェオレの所とは別の、家の近くのスーパーで、紙パック入りの無糖アールグレイを見つけて買ってみました。そして何これ、自分でティーバッグで入れるより旨いじゃん!と感動し、しばらく買っていましたが、やがて彼も商品棚から消えてしまいました。今ではその位置に、同じメーカーから出ている微糖(だったと思う。とりあえず砂糖は入ってます。何せそれは買ったことないからうろ覚えです)の普通の紙パック入りアイスティーが置いてあります。それを見た時思いました。え?無糖アールグレイって人気なかったの?だから甘い奴に変わったの?と。


 真相は確かめずじまいです。だって人気があっても無くても、商品棚から消える時は消えてしまうと、とっくに学習していたのですから。どうしようもないことだと思います。


 寂しい。いや、他にも無糖の美味しいお茶類っていうのは売っているんですけど、自分の好みにドンピシャっていうのがなくなると、自分の味覚が否定された気分になるんですよ。


 推しは推せるうちに推せっていう言葉があるみたいですが、好みの飲み物も同じ感じがします。

 あの飲み物たちを推していた時はやっぱり結構楽しかったです。

                               おしまい

 

 

 

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美味しいはずなのに何故 肥後妙子 @higotaeko

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