第5話 コーヒーブレイク

 サダノブが美人と接点を持ち始めていた頃、ここは畠山家のリビング。

 母とユカリがお茶をすすっている。


「気付いたかなぁ、お兄ちゃん?」

 ユカリが尋ねれば

「どうかなぁ…そっち方面は、朴念仁だから。」

 母がニコニコしながら答え


「「そうなのよねぇ…。」」

 二人して、深いため息をつく。


「とりあえず、持たせた紙袋の意味を理解してくれれば…」

 ユカリが半目になり

「無理ね。」

 母も半目になる。


 サダノブの手に持っている深緑の紙袋には「Les Macarons Parisiens」の文字が躍っている。


「まったく、どこであんなに恋愛音痴を拗らせたかなぁ~。」

 ユカリが湯呑みを起き、後頭部へ腕を回す。

「あら、あんたが『私、お兄ちゃんのお嫁さんになるぅ!』とか言って大騒ぎしたのがきっかけよ♪」

「!!!」

 お母さんニコニコ、顔から火が出るのではと思われるほど赤面するユカリ


「じょ、冗談よね?」

 赤面したまま母に問い返すユカリ

「さぁ~て、どうでしょう?」

 悪戯っぽく笑う母。

「も、もぉ~!」

 吃るユカリ、心に秘めていた物が露骨に発露し混乱気味になっている。

「まぁ、あんたも男同士BoysLoveを拗らせた原因がそれなんだから、仕方ないでしょ?」

 軽く停めを打つ母に大人しく頷くユカリ


「しかし、アカリちゃんも物好きよねぇ。」

 左頬に手を当て困った顔をする母。

「そお?私は、アカリお姉ちゃんなら大歓迎だけど…。」

 自分から話題が剃れたので、急に元気になるゲンキンなユカリ

「朴念仁に変人さん…」

 湯呑みをおいて指を曲げる母

「変人言うなし!」

 変人に反応するユカリ

「よくもまぁ、こんな拗らせ兄妹ざんねんおバカの相手をする気になったものよねぇ。」

 頬杖をつく母

「あら、それは大丈夫よ、お母様。」

 両手を胸の前で合わせ、お目々キラキラ(当社比2倍!)のユカリ

「その時は、男同士BoysLoveを卒業して女同士GirlsLoveに引っ越します!」

 声高らかに宣言するユカリ…しかも、オペラ俳優顔負けのすんばらしい所作を共なって!

「はいはい。」

 そんなユカリを満足そうに眺める母親であった。

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