第3話 サダノブの日常
昼食後、消費されたチョコレートの空箱を尻目に、ジャージに身を包み、僕は日課のトレーニングに出かけた。
高校から始めた
インターハイや高校野球が始まると、いろんな会場に出張って行っては、一花咲かせるのが主な活動内容だ。
暑かろうが、寒かろうが関係なく、長ランを羽織りゲタ履きで闊歩していれば、いろいろと言いがかりをつけて来る方々もいる。
そんな方々を丁重にオモテナシ出来るように、鍛錬を積むことも
諸先輩方には、柔道やら空手、剣道に弓道を嗜む方から、カンフーに少林寺、はては
ほとんど全員が、何らかの有段者というのは、公然の秘密で、生徒会からも一目置かれている。
そんな事もあり、僕は合気道を精進する事にした。
妹も護身術という事で、ともに通ってはいるが…彼女もすでに段持ちだ。
下手をすれば、僕が負けるかもしれない。
明日の決闘に備え、今日はランニングを軽めに、体術に重点を置いたメニュー構成だ。
小春日和の穏やかな午後、気の早い菜の花の香りに誘われながら、三時間みっちりと身体を動かして帰宅した。
夕食を済ませ、明日に備えて
「あんた・・・」
「お兄ちゃん・・・」
「「まさか、その格好で行くの?」」
「勿論。
決闘を申し込まれたんだ。
正装でないと失礼でしょ!」
僕の返答に、
妹が切り出す。
「お兄ちゃん。
ワタナベ アカリさんって、知ってる?」
「知らん!」
女性名詞に類する単語などは、小学校以来無縁なのだ。
「だよねぇ…。」
妹が肩を落とす。
「あんた、明日はジャケット、パンツにしておきな。」
母が助け舟を入れる。
「何でだよぉ?」
「渋谷109で決闘するような
聞き返す僕の肩を両手で抑える母。
「とりあえず、母さんの指示に従う!
いいね?」
「お兄ちゃん、今回はママの指示に従って!」
説得する母の横で、妹も手を合わせてお願いしてくる。
「わかったよ。」
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