はーー笑った!仕事で疲れた時また読んで笑って元気でます。
「常識」という言葉のゲシュタルト崩壊を、これほど愉快に、そして鋭く描き出した作品に出会えるとは思いませんでした。
もう、最高。
読み終えた瞬間、変な汗と笑いが止まらなくて、しばらく「バババババキューム!」の幻聴が頭を離れませんでした(笑)。
まず「キャラの濃さ」が凄まじいです!歯医者という、誰もが緊張し、口を封じられる「絶対的に弱者になる場所」に、まさかのホスト的エッセンスをぶち込む。
この発想どこから?いつもの作風との温度差で笑い死にそうになりました。
医療用マスクの下でキメ顔」なんて、想像しただけで腹筋が崩壊します。特に、あの絶望的な状況での「キュンです」ポーズ……。
痛みと困惑と羞恥心が入り混じった主人公の絶望感が手に取るように伝わってきて、可哀想なのに笑いがこみ上げてくる!
それでいて、カイトの腕が「普通に良い」のがまたニクいんですよね。「チャラいけど仕事はできる」という、一番抗えないタイプを配置することで、読者も主人公と一緒に「……まあ、治るならいいか」と観覚が麻痺していく。麻酔効いてきた!
この、常識の境界線がじわじわと溶けていく感覚が、まさに「快感」でした。
極めつけはラストの一撃。
ツッコミが、読者の心の叫びを見事に代弁してくれました。ギャグの濁流に溺れさせながらも、最後には「常識って何だっけ?」と深淵を覗かせる、この構成の妙。ただのコメディに収まらない、知的な毒気すら感じさせる筆致に完全に脱帽です!
あまりにもこのクリニックのファンになってしまいました。
「親知らず2本いきまーす!」
【本作のおいしい味わいかた】
本作は、繊細かつゲキレツな味わいを持つ作品です。下記の説明をよくお読みになり、用法に従って味わうことを、強くお勧めいたします。
1.遠部作品「植物記」コレクションから、今の季節に合う一作を読む。
2.遠部作品「旅の薬売り」コレクションから好みの一作を読む。
3.遠部作品『雷光』を読む。これ、なんとわずか1151文字のホラーです。
これで準備完了です。
しばしば、ここで遠部右喬ワールドにはまり、つぎつぎと他の作品に手を出すという副作用に悩まされる方がいらっしゃいますが、それは仕方ありません。対処法は心行くまで読むことです。
副作用が落ち着いたら、本作『疑え、その「常識」を!』を読みましょう。
本作は至極真面目な作品です。かといって、うんざりするような説教や、鼻につくうんちくが語られるわけでもありません。
ぜひぜひ、本作を満喫してください!
歯医者って言ったらどんなところか。
割と静かなイメージが強いのではないと思われます。そんなところでなんか金属音が……という不穏なものが漂う感覚も。
でも、その「常識」は本当に正しいものだったか。
本作の主人公が迷い込んでしまった歯医者は、その辺りのテンションが「なんかこう……」な感じになっていた!
これはアウトなのかセーフなのか。
でも実際にところ、「これはこれでアリ」なんじゃないか。そんな気にもさせられるというすごく不思議な味わいがあります。
あなただったら「この歯医者」をどう思うか。是非とも本作を読んで確かめてみてください。
幻想的な純文学を主戦場にする遠部右喬さんの最新作です。実は、本来の作風「春花語り」も同時にアップされおり、「へー、二つあるんだ。エッセイの方から読むか」って思ったら、これが大当たり!
いや、これは面白いな。。わたくし、前から、「純文学が書ける人はギャグの才能もある」って思っていて「それはどちらも人間の琴線を刺激しないと感動が湧いてこないものだからだ。根っこでは同質なのだ。その証拠に、センスだけで勝負するギャグマンガの名作(がきデカ、マカロニほうれんそう、等)は10巻までしか持たないではないか。源泉が枯れるからだろう」と思っていました。
本作は「常識」という人を縛る呪いの言葉を、歯科クリニックといういわばありふれた題材に組み込み、非常識的な笑いへと導く、大変見事な構想と展開を持つ、知的ギャグ小説です。
出てくるチャラいホストみたいな歯医者が案外腕がいいのも好感度高しですね。鼻ピアスした金髪のコンビニ店員が、やたら丁寧でレジが速いというのと似た印象を持ちました。
素晴らしい作品です。
是非ご一読を!