止まらないエースストライカー

佳上成鳴 カクヨムコンテスト参加中!

プロローグ


『決まったー! 東島一誠とうじまいっせい選手の見事なゴラッソ! やりました! ジェファ、J1優勝です!』


 一誠の放ったゴールに向かって放たれたボールは低い位置を保ちつつも勢い良くその軌道を描いていく。選手達もサポーターも審判も敵チームも全員がそのボールに注目した。そしてその静寂の中、ボールはスローモーションのように飛んでそのままゴールに吸い込まれ、その瞬間、轟音のような歓喜の声がスタジアムを包んだ。後半のアディショナルタイムが終わる数秒前の出来事。

 味方にもみくちゃにされ、時には頭を容赦なく叩かれて喜ばれたので痛いと言いながらも一誠は甘んじて受けて笑う。

 敵チームはその場で崩れ落ちるようにほぼ全員が倒れこみ、相手キーパーは悔しさで涙を流す。

 東島一誠はその足でJ1優勝のゴールを決めた。

 ジェファ1と言われるイケメンでファン投票でも常に1位の一誠はストレートの髪の毛をかきあげ喜んで両手を上げ、幼い頃を思い出していた。辛い日々は1度サッカーから離れて生活することから始まり、サッカーを再開しても一誠にとっては楽しい日々とは言い難く、問題から目を反らしたくても出来ない生活だった。だがそれを打破したのは確実にある人物のおかげで、自分にとって彼女は女神だと信じたくなるくらい。

 一誠は勝利の嬉しさを胸にその女神を探すとすぐに見つかった。

 細くて綺麗な女性はその長いくせ毛を揺らして一誠に手を振った。それを見て一誠は叫ぶ。


「やったぞー! うおーー!」


 サッカー選手として誰もが夢見るJ1優勝。それを成し遂げた喜びはこの上ないものだった。


 一誠はその女性を見ながら思っていた。彼女と出会ったその日からのことを───

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る