田中君の野望

クライングフリーマン

田中君の野望

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 俺の名は、田中秀樹。

 学生時代からの親友、中田豊と漫才コンビ『中田中』を組んで、もう随分になる。

 似た様な漫才コンビは2人とも所帯持ちだが、俺達は違う。

 ひょんなことから、中田が俺の彼女を「寝取った」ことが分かった。


 俺は、ある計画を練った。

 俺達は、賄い付きのアパートの2階で下宿している。

 部屋はまだあるのだが、店子は俺達だけだ。


 今日は、大家のおばさん夫婦が出掛けている。

 いつもは、どちらかがいるのだが、今日は、法事で出掛けたのだ、夫婦揃って。


 夜までは、時間がある。

 漫才の稽古を始めたが、例によって中田は愚図りだした。

 文句を言いたいだけなのだ。「ダメだし」と称して。

 自分では、台本どころかメモさえ書かない。


 生来の「怠け者」なのだ。

 俺1人でバイトしたこともある。

「要領の良さ」だけで生きて来た男だ。

 直前に台本は暗記するが、本番では「アドリブ」が多い。

 俺はいつも「介護」役だ。


 夕方、午後5時。大家さん夫妻が帰ってきた。

 中田は階下へ降りていった。

 また、無駄話をしているのだろう。

 俺は台本の手直しをした。

 途中で眠くなり、居眠りをした。


 階下が静かだ。

 時計は、もう午後8時になっていた。

 寝過ぎたか。

 階下に降りて、異様な光景を目にした。


 大家さん夫妻は血を流して倒れている。

 近くにガラスの破片が飛び散っている。

 中田を見ると、破片の大元を握っている。

 ワインだ。

「これは、これは、割っちゃいけなかったんだ。」と、中田が呟いた。

 台所の流しに、俺達が新人賞を貰った時の受賞カップの破片があった。


 俺は、静かにスマホで110番をした。

 これで、俺がワインに入れた睡眠薬は役に立たなくなった。

 腐れ縁は、中田から切ってくれた。


 10分後。サイレンの音が近づき、玄関から声がした。

 俺は、ゆっくりと移動し、玄関のドアを開けた。

「こちらです。」


 ―完―



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田中君の野望 クライングフリーマン @dansan01

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