第4話 【SIDE】一方、エルフ国では②
リディアが巨木を離れてから、約2週間後。
世界樹の麓にそびえる王宮内のバルコニーにて。
ヴェロニカとギルバードが、優雅にランチを楽しんでいた。
一枚板の立派なテーブルの上には、他国から取り寄せた豪華な食事が所狭しと並んでいる。
ギルバードがワインを片手に機嫌よく口を開いた。
「ここ10年で、我が国もずいぶんと潤ったね。これも“豊穣の巫女”である君のお陰だね」
「ええ、少なくともあと500年はこの国も安泰よ」
ヴェロニカはほくそ笑んだ。
魔力泉に姉リディアが囚われている限り、この豊穣は続く。
次期女王である自分が引退するまで、エルフ国は潤うだろう。
(邪魔な姉だと思っていたけど、役に立ってくれるじゃない)
そんなことを考えながら、ワインを飲んでいると、
コンコンコン
ノックの音が聞こえて来た。
扉が開き、年老いた大臣が入ってくる。
「ヴェロニカ様に、ご報告があります」
「何かしら?」
「北方の作物の一部の育ちが悪いとの報告が複数上がってきております」
「え?」
ヴェロニカは眉間にしわを寄せた。
「原因は?」
「調査中ではありますが、ここ最近の寒さが原因ではないかと」
「そう」と言いながら、彼女は考えを巡らせた。
確かに、ここ2週間ほど少し気温が低く、空気が少し乾燥している気はする。
(でもまあ、そんな時期もあるわよね。昔はもっと寒かった訳だし、問題ないわよね)
ヴェロニカは大臣を睨むと横柄に口を開いた。
「たまにはそういうこともあるでしょう。そういった小さなことはいちいち報告しなくて結構よ」
「……かしこまりました」
大臣がお辞儀をして去った後、ヴェロニカとギルバードは改めて乾杯した。
作物の育ちが悪いことなど頭から消えてなくなる。
しかしその時、彼らはまだ知らなかった。
姉を囚えることで得た“豊穣”が、静かに崩れ始めていることを。
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