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《そうだね……》
この瞬間、私は愛染の推理が正しいと確信していた。
刑事事件においても彼女が並はずれた洞察力を発揮することは、ぐひん堂殺人事件以来、一度ならず見せつけられてきた。そうして解決に至った事件の一つの捜査を担当していたのが、私の友人で神奈川県警捜査一課の刑事、野崎進だ。
《やっとわかってくれたようだね。――それじゃあ、悪いが、県警の友人に照会をお願いしてくれないか? おそらく事件は堀のような池に囲まれたホテルで起きたんじゃないかと思う。たとえば、芝のインペリアル・グランド・ホテルとかね》
《なんだ、もうそんなところまで当たりをつけているのか》
私があきれてそう言うと、愛染は《当たりというほどのものではない》と言った。
《日本では周囲を池に囲まれている邸宅なんて考えにくいからね。寺の堂ならあるかもしれないが、あれは居住空間ではないので検討対象外だ。そこで、ホテルだろうと思っただけだよ。そして、芝インペリアル・グランドホテルのことを思い出したというわけだ》
ともあれ私は県警の野崎に連絡してみると言った。
愛染が言うように、犯罪が行なわれている可能性が少しでもあるのなら警察に通報すべきだ。それが誤解で笑われたとしても、それはそれで喜ぶべきことなのだから。
《頼んだよ》
愛染はほっとした様子で言った。
《僕は今日一日ずっと研究室にいるから、なにかあったら連絡をくれたまえ》
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